25 / 28
盤石な領地を作る!
放送開始
しおりを挟む
少し休憩した後、さっそく準備を始める。私はこの放送室に入るのは初めてだ。だから全く放送の仕方もわからない。というのは子供時代の話。一度目の人生では私は勿論、放送設備を使ったことがある。厳密には部下がやっているのを見ていただけだが、それでも覚えられてしまうのが私だ。
問題があるとすれば、この設備に魔力を流し込む人間がいないという事だ。私とトーマスは放送に出なければいけないから、その役目ができないのだ。
「何か問題が?」
トーマスが、険しくなった私の顔に気が付いたらしい。
「いえ、なにも……少し難易度が高いというくらいよ」
そう。魔力供給はできない事はない。難易度が高く上手くいくかわからないが、しかし、やるしかないだろう。遠距離で魔力を飛ばして供給する。空中に霧散してしまう分が相当量あるから、高出力を維持したままコントロールまでして、魔力供給口に魔力を注がなければいけない。どれくらい続けられるかわからない。まぁどのみち、放送が始まったらこの場所はバレて、衛兵がやってくるだろう。短期決戦だ。
「……バリケードは作ったけど、それ以外に遮るものは無い、おそらくすぐに突入されるわ」
「はい」
「簡単に力強く、それを心掛けるのよ」
トーマスの紹介をしたら、そのまま挨拶をしてもらう。そのあと私の宣言だ。衛兵が集まってきて突入されるまでに終わらせる。そのために簡単に力強く。そういう事である。
全ての調整を終わらせた。それを確認した後、設備のスタートボタンを押す。ここからは設備に触れられない。上手くいってくれることを祈って、魔力を込める。そのまま魔力供給が途切れない様に気を付けながら、隣の部屋のカメラの前に移動した。
「皆さん、こんにちは、ヴィオラ・グリムです」
成功していれば私の映像が、各地の受信設備に映し出されているはずだ。窓から確認しているトーマスに視線を送ると、こちらに振り向いて頷いた。ちゃんと映し出されているらしい。少なくともこの街には私の言葉は届いている。
「夕方の時間帯、夕食の団らんの時間に失礼します……挨拶はこれくらいで、時間がないので単刀直入に申し上げます、トーマスこちらへ」
声をかけると、トーマスが私の隣に並んだ。スラム街からやってきた汚いままの姿だが、何とかする時間はなかった。しかし、逆にこれでインパクトは与えられるのではないか。トーマスがスラムの人間というのが、よりわかるのではないか。
「この度、この者を私の従者……近衛の騎士に任命しました」
トーマスの背中を軽く叩く。挨拶の合図だ。
問題があるとすれば、この設備に魔力を流し込む人間がいないという事だ。私とトーマスは放送に出なければいけないから、その役目ができないのだ。
「何か問題が?」
トーマスが、険しくなった私の顔に気が付いたらしい。
「いえ、なにも……少し難易度が高いというくらいよ」
そう。魔力供給はできない事はない。難易度が高く上手くいくかわからないが、しかし、やるしかないだろう。遠距離で魔力を飛ばして供給する。空中に霧散してしまう分が相当量あるから、高出力を維持したままコントロールまでして、魔力供給口に魔力を注がなければいけない。どれくらい続けられるかわからない。まぁどのみち、放送が始まったらこの場所はバレて、衛兵がやってくるだろう。短期決戦だ。
「……バリケードは作ったけど、それ以外に遮るものは無い、おそらくすぐに突入されるわ」
「はい」
「簡単に力強く、それを心掛けるのよ」
トーマスの紹介をしたら、そのまま挨拶をしてもらう。そのあと私の宣言だ。衛兵が集まってきて突入されるまでに終わらせる。そのために簡単に力強く。そういう事である。
全ての調整を終わらせた。それを確認した後、設備のスタートボタンを押す。ここからは設備に触れられない。上手くいってくれることを祈って、魔力を込める。そのまま魔力供給が途切れない様に気を付けながら、隣の部屋のカメラの前に移動した。
「皆さん、こんにちは、ヴィオラ・グリムです」
成功していれば私の映像が、各地の受信設備に映し出されているはずだ。窓から確認しているトーマスに視線を送ると、こちらに振り向いて頷いた。ちゃんと映し出されているらしい。少なくともこの街には私の言葉は届いている。
「夕方の時間帯、夕食の団らんの時間に失礼します……挨拶はこれくらいで、時間がないので単刀直入に申し上げます、トーマスこちらへ」
声をかけると、トーマスが私の隣に並んだ。スラム街からやってきた汚いままの姿だが、何とかする時間はなかった。しかし、逆にこれでインパクトは与えられるのではないか。トーマスがスラムの人間というのが、よりわかるのではないか。
「この度、この者を私の従者……近衛の騎士に任命しました」
トーマスの背中を軽く叩く。挨拶の合図だ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる