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目覚めない病気

エピローグ02

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 何度かそういう状態の人間を見た事があるけど、目を覚ました試しがない。ただ今回は、聖女二人がかりの全力回復聖法を頭にかけた。頭の深部まで届いていれば、もしかしたら目を覚ますかもしれない。
「もうこれ以上できる事はありませんから、あとはオルリヌ様の生命力次第でしょう」
 あれでダメなら、オルリヌの運がなかったという事だ。諦めるしかない。
 シネヴィラの表情は暗かった。割り切れないという感じだろうか。とても良い子だなと思う。根っからの聖女だな。私と違って。私が一人で自嘲していると、シネヴィラが口を開く。
「私がもっと優秀で経験豊富な聖女なら」
 肩を落とすシネヴィラ。もしかしたらここに来たのは、慰めてほしかったからだろうか。そんな打算的に動く子ではない気がする。どうしたらいいか分からず、ここに来たのか。どっちでもいいけど、ここで落ち込むのはやめてもらいたい。私は一つため息をついてから声をかける。
「……自分の力量がどれくらいか分かっていないのですね、それは他の聖女に会った事がないからだと思いますよ……まぁ他の聖女にも言える事ですが」
 聖女は一つの場所に留まる場合が多い。いろいろ理由はあるけど、周りの人間が聖女を放そうとしないから、というのが一番多いだろう。だから自分の力を比較する相手がいないのだ。
 シネヴィラは私の言いたい事がわからない、という感じだった。鈍い子だ。もう。
「……あんな鈍器で頭をかち割られたのに、目を覚まさまないにしても、今も生きているのですよ……わた、し……より」
 私は、そこまで言ってため息をつく。認めたくなくて続きが言えない。
 殴られてから、シネヴィラが到着するまでにそれなりに時間があったはず。つまり生き返らせた、そう言ってもいいレベルの回復をした事になる。私はそんな事は出来ない。
「あぁ、あの……回復に関してだけ、関してだけですが、私よりも……う、えです」
「え? なんです?」
「チッ」
 シネヴィラの反応に、私は盛大に舌打ちをしてしまう。それに対して慌てふためくシネヴィラ。しまった。つい出てしまった。私は一つ咳ばらいをすると、澄ました表情を浮かべた。
「まぁ、他の聖女にもっと会ってみるのがオススメです、聖女教会に行ってみるのもいいでしょう、聖女の力の使い方を教える教官のような人もいますから」
「……教官」
 そんな呟きが微かに聞こえてくる。興味があるらしい。そういえば私のフクロウに、驚いていたな。
 シネヴィラはそれからしばらく黙っていたけど、次第に私を見つめて何かを言いたそうにもじもじする。
「なんでしょう」
 問いかけると、意を決したようにシネヴィラが口を開いた。
「オーロラ様の旅に同行させてもらって、それでその……教えて……」
「お断りします」
 私は出来る限りの最大限の笑顔を浮かべて返した。私よりできるやつは、みんな死ねばいいと思う。
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