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目覚めない病気

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「七日前の夜、マリア様はオルリヌ様の寝室を訪ねました」
 寝室が別々だったという事は、使用人に聞き込みした時に聞いた。夫婦の関係は冷めきっていたらしい。つまりオルリヌは、マリアへの興味を失っていた。ある意味、マリアだけが警戒していない状態のオルリヌに近づけた存在かもしれない。
「マリア様は部屋に入ってから、おそらくそドレスを脱いで肌着になっていたでしょう……そして隙を伺います、オルリヌ様はさすがにマリア様を警戒していなかったでしょうから、簡単に隙を見せました、そして、花瓶を使ってオルリヌ様の後頭部を殴りつけたのでしょう」
 刃物類を持ち込まなかったのは、オルリヌが武人だったからだろう。おそらくそんな物を隠し持っていたら、気付く可能性があった。
 そこはサイラスが教えてくれた。武器類を持っている人間ともっていない人間では、雰囲気というか空気感が違うらしい。本人も上手く説明できない様だったけど。とにかく戦いの経験を積んでいくと分かるようになる感覚らしい。その感覚をオルリヌほどの人間なら、もちろん持っていただろう。それに妻のマリアに、その話をした事があった可能性も充分ある。
「殴った後、マリア様はオルリヌ様がちゃんと亡くなったか確認せずに、シネヴィラさんを呼びました、先に呼んでいたかもしれません……とにかく罪を擦り付けるためにです」
「罪を……擦り付ける」
 私の言葉を聞いたシネヴィラが、小さく呟いた。改めて言葉にした事で、ショックを受けたらしかった。この家にどういう関わり方をしていたのかわからないけど、それなりに親しかったという事だろうか。
 聖女という物は利用されやすい。あまり普通の人間と関わりすぎない方が。私は昔の事を思い出しそうになって、小さく頭を振る。それから言葉を続けた。
「待っている間に、ドレスを着て、凶器である花瓶とその時着ていた肌着を隠します……そういえば、オルリヌ様が発見されない様に、誰かに見張らせた可能性もありますね、あとシネヴィラさんを呼びに行った人も、協力者がいたと思いますが、それは置いておきましょう」
 たぶん進んで協力していないだろう。マリアに逆らえず、といった感じだ。こちらから詮索はしないでおこう。あくまで標的は主犯であるマリアだ。
「そうしてやってきたシネヴィラさんに口止めをして、傷を治す様に頼みます」
 そしてマリアは、オルリヌが亡くなったという報告を待っていた。でも結果は違った。オルリヌは目を覚まさないものの、生き残ってしまったのだ。殴ってから傷を治し始めるまでの時間を、故意に遅めたにもかかわらず。
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