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目覚めない病気

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「まず一つ目、シネヴィラさんは背がとても小さいという事です」
 私は一度、シネヴィラに視線を送る。本当に子供と間違ってしまうほど小さい。私の胸に届いていないくらいだ。私は平均的な成人女性より、少し背が高い。けどそれを差し引いても、やっぱり小さいと思う。
「それがどうしたのよ!」
 苛立ちを隠す事なく、マリアが口を開く。本当に短絡的だ。そんなんだから三流の悪党でしかないのだ。私はわざとらしく小さく顔を横に振って、ため息をつく。
「……わかりませんか」
 私の行動が癇に障ったのか、マリアが軽く地団太を踏む。もっとやってもいいが、やりすぎて反応が薄くなってしまうのが勿体ない。
「この花瓶が置いてあったのはおそらく窓際の戸棚です、でもあの部屋……というよりこの館にある調度品はオルリヌ様の体格に合わせているのか、大きいのですよ」
 そこまで言っても、わからないという感じでマリアが私を睨みつけてくる。私はシネヴィラに問いかけるように、言葉を続けた。
「シネヴィラさんの身長では、あの戸棚の上に手が届きませんよ」
「……はい、この館の調度品は私には大きすぎます、しかも住んでいる方たちは困っていないから、踏み台なんて用意されていません、まぁ私はここに住んでいるわけではないので、困っていませんが」
 住むとなればかなり大変だろう。常に踏み台を持ち歩かなければいけなくなる。
「はい、そういう事です……ダメ押しをしておくと、人を殺そうとしているのに、踏み台を携えていく人がいますか? おバカすぎるでしょう、さすがにもっと別の方法を考えるか、踏み台で殴ると思いません?」
 そう諭す様に言葉をかけると、マリアは驚いたのと癇に障ったのがごちゃ混ぜになって、変な声をあげていた。確実に追い詰めている。それを証明する様に、マリアの感情は怒りより恐れの方に少し傾いたようだった。私の中の熱がどんどん上がっていくのが分かる。もう少しで準備が整う。最後に最高の状態で、あの言葉を言う。犯人の顔が、色んな感情でぐちゃぐちゃになる。それがたまらなく快感なのだ。
「はぅん……続いて二つ目です」
 変な声が漏れてしまって、一度言葉を切る。体の奥底がジンジンと焦げる様で切ない。一瞬、腰が砕けそうになったのを堪えて、声をあげた。
「シネヴィラさんは、聖法を使える聖女という事をお忘れですか?」
「……それが何か」
 隣に控えているシネヴィラから、そんな声が聞こえてきた。彼女自身も気づいていないらしい。なかなかおバカな子だなと思う。いろいろ関連付けて物を考えられていないらしい。
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