上 下
14 / 24
目覚めない病気

13

しおりを挟む
「これをどうするつもりだったのですか?」
「そ、それは」
 犯人は両手をギュッと握り締める。あぁ可愛らしい。愛すべきおバカさん。体の奥底がキュンキュンとしてしまう。でもまだまだ。これから追い詰めていくのだ。
「もちろん、私のフクロウに見つかる前に、処分するつもりだったのですよね? これでオルリヌ・マクベーム様の頭を殴ったのだから、そんな物を持っている事がバレたらマズイ、そう考えた、そうですよね? ……マリア・マクベーム様?」
 マリアの顔が激しく歪む。体もより一層強張ったように見えた。良い表情だ。私の体の奥底が、さっきよりも反応してしまう。焦げたような感覚に切なくなってしまう。我慢をしたらもっと良くなれる。そう思って、堪え続ける。
「ふぅ……実はですね、シネヴィラさんに自白してもらいました、七日前に何が起こったのか」
 シネヴィラに顔を向ける。
「奥様、申し訳ありません、約束したのに」
 苦しそうに顔を歪めたシネヴィラ。そんな彼女の肩にそっと触れる。私が壁ドンして無理やり聞き出したのだ。どっちにしてもシネヴィラは悪くない。悪いのはどこまで言っても犯人であるマリアだ。あなたがそんな顔をする必要はない。
「約束したじゃない! 裏切者! なん……」
「あなたは!」
 私はマリアのヒステリックな声を、少し大き目の声で遮りながら続ける。
「本当にお人好しの様ですね、騙されたというのに、シネヴィラさん」
 シネヴィラは今回の事件の片棒を、自覚なく担がされていた。人が良いシネヴィラを騙すという形で利用したのだ。
「先ほども聞きましたが確認です……七日前にシネヴィラさんは館に呼び出されました、そしてマリア様からケガをして倒れているオルリヌ様を見せられたのですね?」
「……はい」
 私の問いかけに、シネヴィラはやっぱり苦しそうに頷く。そのやり取りを見ていたマリアが、何か唸るような声をあげた。その瞬間シネヴィラの体が強張るのが、肩に触れている手から伝わってくる。
 すでに話は聞いたと言っているのに、今話をさせない様にしても意味がないと、どうしてわからないのか。このおバカさんは❤
「それでケガをしているオルリヌ様を治したのですよね? どこをケガしていましたか?」
「後頭部を……ケガしてました、何かで殴られた酷い状態で」
 マリアが我慢できなくなったらしく、こちらに向かって来ようとした。それを見たサイラスが、すぐさま前に立ちはだかる。勝てる訳がない。さすがにおバカさんでもそれを理解したのか、マリアは悔しそうに元の位置まで戻ってしまった。
 サイラスは私達とマリアの間から退くと、続きをどうぞという感じで軽く頭を下げる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その聖女は身分を捨てた

メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

【完結】慈愛の聖女様は、告げました。

BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう? 2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は? 3.私は誓い、祈りましょう。 ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。 しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。 後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】召喚されて聖力がないと追い出された私のスキルは家具職人でした。

ファンタジー
結城依子は、この度異世界のとある国に召喚されました。 呼ばれた先で鑑定を受けると、聖女として呼ばれたのに聖力がありませんでした。 そうと知ったその国の王子は、依子を城から追い出します。 異世界で街に放り出された依子は、優しい人たちと出会い、そこで生活することになります。 パン屋で働き、家具職人スキルを使って恩返し計画! 異世界でも頑張って前向きに過ごす依子だったが、ひょんなことから実は聖力があるのではないかということになり……。 ※他サイトにも掲載中。 ※基本は異世界ファンタジーです。 ※恋愛要素もガッツリ入ります。 ※シリアスとは無縁です。 ※第二章構想中!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

処理中です...