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目覚めない病気
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シネヴィラから聞いた話では、マクベームの領主、オルリヌが七日前から目を覚まさず、ずっと眠り続けているらしい。それで聖女であるシネヴィラはその症状を治そうと奮闘しているらしいが、上手くいっていない。それで偶然出会った私に助けを求めたらしい。
はっきり言って、オルリヌはもうすぐ死ぬだろう。起きないのであれば、食事を与えられない。おそらくかなり衰弱しているはずだ。時間がない。シネヴィラからは、そんな焦りを感じる。
私はシネヴィラについて行く事に決めた。正直オルリヌがどうなろうが、知った事ではない。でも悪人が故意にその状況を作り出しているなら、それだけは興味があるからだった。
「ここです」
オルリヌの館に到着すると、もてなしも何もなくすぐさま寝室に案内された。私とサイラスはシネヴィラの後について、寝室に入る。
中央にはベッドがあり、そこに男性が横たわっていた。体格はかなり良かったという感じ。筋肉は細くなって、見るからに衰弱している。口からすりつぶした食物を、なんとか流し込んでいるのだろう。それでも限界がある。
ベッドの横で顔を歪めて、オルリヌを眺める男が座っている。恰好からして医者だろう。ややあってこちらに気付き、声をあげる。
「……そちらは?」
「私と同じ聖女様です、たまたま出会って、意見を聞きたくてお連れしました」
シネヴィラはそう答えながら、ベッドへと歩み寄る。私達もその後に続いて近づいた。
「オーロラと申します、こちらはサイラス」
短く自己紹介をすると、医者の男は「マークです」と短く返事と最低限の会釈をする。今はオルリヌの事で、頭が一杯なんだろう。私はさっそく本題に入る事にする。
「それで、オルリヌ様は目を覚まさない、ですか」
私の問いかけにマークはため息をつく。
「はい、ずっと眠っておられて……特に傷はありませんし、何かの病気の症状も見えない、なんなのか見当もつかない」
そこまで言って、マークは頭を抱える様にうずくまってしまった。そんなマークの肩にシネヴィラは一度手を置いてから、口を開く。
「そうなんです、傷はもうない、病気の症状もない……回復の聖法も浄化の聖法も、効果はありませんでした」
「……ふーん」
私はそう口にしながら、部屋の中を見渡す。部屋の中には調度品がいくつかあった。寝室だから数は多くない。それにしてもここの部屋を始め、この部屋まで来る間にあった調度品も含めてみんな背が高い。オルリヌは体が大きいようだから、彼に合わせたサイズ感なのかもしれない。
私は窓の方に近づく。窓も少し位置が高い。その横に戸棚があった。高さは私の首と胸の間の辺り。その戸棚の天板には丸い跡がついている。いつも何かが置いてあったのだろう。その何かの周りだけ日焼けしてしまって、跡がついてしまったという感じだった。
はっきり言って、オルリヌはもうすぐ死ぬだろう。起きないのであれば、食事を与えられない。おそらくかなり衰弱しているはずだ。時間がない。シネヴィラからは、そんな焦りを感じる。
私はシネヴィラについて行く事に決めた。正直オルリヌがどうなろうが、知った事ではない。でも悪人が故意にその状況を作り出しているなら、それだけは興味があるからだった。
「ここです」
オルリヌの館に到着すると、もてなしも何もなくすぐさま寝室に案内された。私とサイラスはシネヴィラの後について、寝室に入る。
中央にはベッドがあり、そこに男性が横たわっていた。体格はかなり良かったという感じ。筋肉は細くなって、見るからに衰弱している。口からすりつぶした食物を、なんとか流し込んでいるのだろう。それでも限界がある。
ベッドの横で顔を歪めて、オルリヌを眺める男が座っている。恰好からして医者だろう。ややあってこちらに気付き、声をあげる。
「……そちらは?」
「私と同じ聖女様です、たまたま出会って、意見を聞きたくてお連れしました」
シネヴィラはそう答えながら、ベッドへと歩み寄る。私達もその後に続いて近づいた。
「オーロラと申します、こちらはサイラス」
短く自己紹介をすると、医者の男は「マークです」と短く返事と最低限の会釈をする。今はオルリヌの事で、頭が一杯なんだろう。私はさっそく本題に入る事にする。
「それで、オルリヌ様は目を覚まさない、ですか」
私の問いかけにマークはため息をつく。
「はい、ずっと眠っておられて……特に傷はありませんし、何かの病気の症状も見えない、なんなのか見当もつかない」
そこまで言って、マークは頭を抱える様にうずくまってしまった。そんなマークの肩にシネヴィラは一度手を置いてから、口を開く。
「そうなんです、傷はもうない、病気の症状もない……回復の聖法も浄化の聖法も、効果はありませんでした」
「……ふーん」
私はそう口にしながら、部屋の中を見渡す。部屋の中には調度品がいくつかあった。寝室だから数は多くない。それにしてもここの部屋を始め、この部屋まで来る間にあった調度品も含めてみんな背が高い。オルリヌは体が大きいようだから、彼に合わせたサイズ感なのかもしれない。
私は窓の方に近づく。窓も少し位置が高い。その横に戸棚があった。高さは私の首と胸の間の辺り。その戸棚の天板には丸い跡がついている。いつも何かが置いてあったのだろう。その何かの周りだけ日焼けしてしまって、跡がついてしまったという感じだった。
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