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第二章
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市の商人にお礼を言うと、私達はその場を離れる。
「いかにも居そうじゃないかしら? 北の山」
「そうですね、ではそこに向かってみましょうか」
ジメジメしてて、土もいっぱいある。すごく沢山いるような気がする。私はなんだか嬉しくなって、少し歩くのが早くなる。
「でも、大丈夫ですか?」
ふいにマークがそう聞いてきた。私は歩きつつ、返事をする。
「何が?」
「オオミミズですよ、その……見た目があまり」
「あぁ、そうよね」
デカイミミズだからグロテスクではあるだろう。でも魔物だから知能もある。知能があればテイムの魔法で落ち着いて話ができる。それで気持ち悪さが、軽減する訳ではないけど、まだ、そういう恐怖心が無いだけで、だいぶ違うのではないだろうか。
「うん、考えてみたけど大丈夫……毒みたいに死ぬわけじゃないし、良い方よ」
「そうですか」
「そういうマークは大丈夫なの?」
私の問いかけにマークは微笑んで答える。
「子供の頃は農作業もしていましたので、見慣れてますから、大丈夫ですよ」
「へぇ、農作業してたんだ」
初めて聞いた。そういえばマークは使用人になる前、いろいろな事をしていたらしい、という事をメイドから聞いた事があった。本人から聞いたわけじゃないけど、そうやって、沢山のところで、お金を稼がないといけないくらい、貧しかったとか。ただそのおかげで、いろんな事ができて、優秀な使用人になる下地ができたのだろうと思う。
「あんまりマークの昔の話を、聞いた事ないわね、聞いてみたいわ」
私の言葉にマークは少し困った様に笑う。
「いろいろな事がありすぎて、話すのに時間がかかります、時間がある時にしないと」
「そうなの? ふふ、聞き応えがありそうね」
「はは、そうですね」
相変わらず少し困った様子で、マークが笑った。
※
私達は街を出て、山に向かって歩いていった。目的の山は普通に見えていて、迷いようもない。近づいてきて、なんとなく高さの感覚が分かってきた。それほど大きい山ではなく、頂上まで上って帰ってきても、昼過ぎくらいには街に戻れそうな印象だ。遭難する心配も無い気がする。
「途方もなくデカイ山じゃなくて、よかったわ」
「えぇ、私もそこを心配してました、でもこれぐらいなら、たいした事は無さそうです」
ホッとしたような表情になるマーク。ただ、そうは言っても山である。登るのは体力を使いそうだ。私達は出来るだけ、緩やかな傾斜を探して、そこから山へ入って行く。
「いかにも居そうじゃないかしら? 北の山」
「そうですね、ではそこに向かってみましょうか」
ジメジメしてて、土もいっぱいある。すごく沢山いるような気がする。私はなんだか嬉しくなって、少し歩くのが早くなる。
「でも、大丈夫ですか?」
ふいにマークがそう聞いてきた。私は歩きつつ、返事をする。
「何が?」
「オオミミズですよ、その……見た目があまり」
「あぁ、そうよね」
デカイミミズだからグロテスクではあるだろう。でも魔物だから知能もある。知能があればテイムの魔法で落ち着いて話ができる。それで気持ち悪さが、軽減する訳ではないけど、まだ、そういう恐怖心が無いだけで、だいぶ違うのではないだろうか。
「うん、考えてみたけど大丈夫……毒みたいに死ぬわけじゃないし、良い方よ」
「そうですか」
「そういうマークは大丈夫なの?」
私の問いかけにマークは微笑んで答える。
「子供の頃は農作業もしていましたので、見慣れてますから、大丈夫ですよ」
「へぇ、農作業してたんだ」
初めて聞いた。そういえばマークは使用人になる前、いろいろな事をしていたらしい、という事をメイドから聞いた事があった。本人から聞いたわけじゃないけど、そうやって、沢山のところで、お金を稼がないといけないくらい、貧しかったとか。ただそのおかげで、いろんな事ができて、優秀な使用人になる下地ができたのだろうと思う。
「あんまりマークの昔の話を、聞いた事ないわね、聞いてみたいわ」
私の言葉にマークは少し困った様に笑う。
「いろいろな事がありすぎて、話すのに時間がかかります、時間がある時にしないと」
「そうなの? ふふ、聞き応えがありそうね」
「はは、そうですね」
相変わらず少し困った様子で、マークが笑った。
※
私達は街を出て、山に向かって歩いていった。目的の山は普通に見えていて、迷いようもない。近づいてきて、なんとなく高さの感覚が分かってきた。それほど大きい山ではなく、頂上まで上って帰ってきても、昼過ぎくらいには街に戻れそうな印象だ。遭難する心配も無い気がする。
「途方もなくデカイ山じゃなくて、よかったわ」
「えぇ、私もそこを心配してました、でもこれぐらいなら、たいした事は無さそうです」
ホッとしたような表情になるマーク。ただ、そうは言っても山である。登るのは体力を使いそうだ。私達は出来るだけ、緩やかな傾斜を探して、そこから山へ入って行く。
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