身分違いの恋はいけません?!そんなの知るか!だったらOKな国を私が作ってやるわよ!そこで結婚するからいいもんね!バーカ!

高岩唯丑

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第一章

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「そうだけど……誰? 初めて見る顔だね」
 訝しげにこちらを見るアルクに、すぐさまマークが笑顔で一歩前に出る。
「突然すみません、ちょっと世間知らずな子なもので」
 確かに世間知らずかもしれないけど、なんか言われると悔しいな。私がむくれて見せても、マークは無視で、話を続ける。
「セブルア様からアルク様のお話を聞きまして、こうして訪ねてきました」
 マークがそこまで言うと軽くお辞儀をした。商人のオジサンはそんな名前だったのか。初めて知った。
「あぁ、セブさんの、なら信用できる」
 今まで訝しむ表情が一変して、笑顔でアルクがそう言った。
「それで何? 客って感じじゃないよね」
「はい、そうですね……」
 アルクの問いかけに、マークが丁寧に答えようと口を開く。私は説得よりも本音をぶつけた方が良い気がして、マークを押しのけた。このアルクという男は、そういう男な気がする。私は思いを正直に言葉にした。
「誰も悲しい諦めをしなくていい国を作りたいの! その為に誰の土地でもない土地が必要で、だからポイズンタイガーのいる半島に行きたい! 協力してほしいの!」
 余計な事は言わない。ただ思いを言葉に乗せるだけ。私の言葉にアルクは驚く。マークも驚いたあと「物には順序という物が」と呆れるように顔を振る。でもこっちの方が効くと私は思った。そして、その予想は当たったらしかった。
「ははははっ! なるほどね! セブさんが俺を紹介した訳だ、そんなの聞いて俺が協力しないなんて、賢い選択できるわけない」
 とても嬉しそうにアルクは笑う。それを見たマークはすぐに私に視線を送った。私はニヤリと笑って見せる。どんなもんだ。
「悲しい諦めをしなくていいように、いいね、そんな国、俺は求めてたよ」
「じゃあ、連れてってくれるの?」
 私は確認のためにアルクに問いかける。アルクは「当たり前だ、連れてってやる」と親指を立てて、笑う。
「やった! マークやったね!」
「あっ、はい、そうですね」
 少し納得していない様子のマークが、たどたどしく私の言葉に相づちした。とにかくよかった。こんなにも早く、目的に向かって進んでいけるとは、とてもありがたい。
「ところで、いくらほど出せば」
 思い出したように、マークがアルクに向かって、お金の話をする。ちょっと野暮な事のような気がするけど、さすがに無料でというのも申し訳ない話だ。
「いいよ、金なんて……あぁそうだ、そっち方面に商売しに行く事にしよう、そのついでにあんた達を乗せていくよ、それなら、気兼ねなく行けるだろ?」
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