私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑

文字の大きさ
上 下
14 / 17

13

しおりを挟む
 夜になって、閉店作業が終わると私はさっそく、図鑑を開いて、今日出された課題の花を探した。それがとても大変である。とんでもなく分厚い図鑑が、本棚一杯に並んでいて、ここからあの花を見つけ出さないといけない。イラスト付きで花の特徴もしっかり書かれているので、見れば気付くと思うけど。問題はそれだけじゃなかった。花言葉は別の書籍を探さないといけない。元々花言葉は吟遊詩人がつけたのが定着したらしい。だからというべきか、学術的な図鑑には花言葉は載っていない。花言葉の詩集から探し出さないといけないのだ。しかもこちらはイラストが無いから、花の名前の文字を探す作業。
「はぁー」
 私は思わずため息をついた。まずは図鑑で花の名前を調べるところから。それが見つかったら、詩集から、その花の名前で花言葉を探す作業。途方もない。
「最初はそうなりますよね」
 ファーリスが夕食を作りながらそう言った。とてもいい匂いが部屋中に充満している。集中力が持っていかれそう。
「ファーリスさんは全部覚えているんですか?」
「さすがにそれは」
 ファーリスは頭を横に振って、続ける。
「どこにどの花の事が書かれているかぐらいを、なんとなくしか把握していませんよ」
 余裕な感じでファーリスは言った。それもすごい事だと思う。ファーリスが花について調べる時、図鑑を何冊も開いている所を見た事がない。本当にだいたい把握しているという事だ。
「それより、もうすぐご飯が出来ますよぉ」
 ファーリスがクスクスと笑いながら、軽い風の魔法で私に料理の匂いを当てて邪魔をしてくる。お腹の虫が空腹を訴えた。
「もぉ、邪魔しないでください!」
「はは、ご飯作らなくてもいいのですか?」
 意地悪な笑みでファーリスがそう問いかけてくる。
「それは……ダメです」
 怒るに怒れず、私は観念したように唸った。ファーリスは私の姿を見て「食いしん坊ですもんね」と笑う。悔しいけど、ファーリスの作る料理は美味しい。私は今までこれほど食に対して執着はなかったけど、それを変えてしまうほど、ファーリスは料理が上手いのだ。
「いけない、いけない」
 私は誘惑を振り払うため、頭を横に振ると、図鑑に手をかけようする。少しでも図鑑を開いて、調べを進めていかないといけない。途方もなく時間がかかってしまうから。
「ほらほら」
 相変わらず風魔法で私に料理の匂いを流してくる。とてもいい匂いだ。ついついその匂いをずっと嗅いでいたくなる。
「むぅ!」
 私は抗議の声をあげた。ファーリスは嬉しそうに微笑んだ。
しおりを挟む

実はブログをやっています!
良かったら遊びに来てください!

小説の時間

キャラクターの説明や用語の説明、制作の裏話など、更新予定です!
また、ラノベ以外の小説はここに載せる予定です!
感想 5

あなたにおすすめの小説

田舎っぺ令嬢が悪役令嬢に仕立て上げられたが収拾がつかなくなったお話

下菊みこと
恋愛
田舎っぺ令嬢が幸せになるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?

せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。 ※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました

真実の愛かどうかの問題じゃない

ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で? よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」

ことあるごとに絡んでくる妹が鬱陶しいので、罠にかけました

四季
恋愛
わがままに育った妹は、私の大事なものをことあるごとに奪ってくる。しかも父親は妹を可愛がっていてまっとうな判断ができない。 これまでは諦めるだけだった。 でももう許さない。 妹の特性を利用し、罠にはめるーー!

【完結】仕方がないので結婚しましょう

七瀬菜々
恋愛
『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』 アメリアは静かな部屋で、自分の名を呼び、そう高らかに宣言する。 そんな婚約者を怪訝な顔で見るのは、この国の王太子エドワード。 アメリアは過去、幾度のなくエドワードに、自身との婚約破棄の提案をしてきた。 そして、その度に正論で打ちのめされてきた。 本日は巷で話題の恋愛小説を参考に、新しい婚約破棄の案をプレゼンするらしい。 果たしてアメリアは、今日こそ無事に婚約を破棄できるのか!? *高低差がかなりあるお話です *小説家になろうでも掲載しています

すべて『反射』してしまうようです

夜桜
恋愛
 辺境伯令嬢エイラは、子供のころはどん底の不幸だった。  不運が続く中、お見合いで伯爵と婚約を交わす。しかし、それは望まぬ婚約だった。婚約を破棄するも更に不幸が続く。  他の令嬢から嫌がらせを受けるようになっていた。  苦悩の中、幼馴染のブルースと再会。彼がいると幸せになれた。ブルースが近くにいると不思議な力『反射』を受動的に発動できたのだ。  反射さえあれば、どんな嫌な相手からの罵詈雑言も、事故や災難さえも『反射』する。決して不幸が訪れなかった。  そんなブルースを傍に置きたくてエイラは奔走する。

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

処理中です...