私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑

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 私は頬を膨らませて、ファーリスに背中を向ける。
「すみません! 機嫌直してください」
 ファーリスが大げさに謝ってくるのを少し振り返って見て、私は吹き出してしまう。
「もぉ、しょうがないなぁ」
 笑わせてもらったのに免じて、私は許しの言葉を伝える。ファーリスは「よかった」と微笑んだ。
「なんか最近、意地悪です」
 体をファーリスの方に向きなおしながら、私は苦言を呈す。最初の頃はかなり優しくて、ちょっと心配しすぎではというくらい、私の事をずっと見ていた。まぁ、打ち解けてきたという事なんだろうか。
「でも、よく考えたら、甘い香りはありきたいと言うか、もう少し、捻った感じの方がいいですかね」
 私は真面目な顔に変わって、仕事の話を再開する。
「あぁ、確かに」
 ファーリスは腕を組んで深く考え始める。私もそれに倣って、考えを深めた。甘い香りだけなら、極端な話、誰でも作れる。花屋が売るなら、家庭で出来ない事をしなければ。花屋らしく、いろんな花をブレンドする。合わせる。私は閃く物を感じた。その勢いでほとんど勝手に言葉が出てくる。
「いろんな花のブレンドです! その名も花束香り袋! どうですか?!」
 言い終わって、気付くと私の勢いに圧倒されて、ファーリスが呆気にとられた表情で私を見つめていた。私は顔が熱くなるのを感じる。なんと、はしたない事をしてしまったんだろう。穴があったら入りたい。私は体を小さくして俯く。恥ずかしくてファーリスの顔を直視できない。
「いや、ちょっとびっくりしてしまって、すみません、花束香り袋いいですね! とってもいい考えです!」
「本当ですか?」
 俯きを解除して私はファーリスの顔を見つめる。はしたない事をしてしまったけど、自分の案を認めてもらえるのは単純に嬉しい。
「本当です! 面白いと思います」
「……よかった」
 恥ずかしさの熱さから、次第に嬉しくて興奮する熱さに変わっていく。仕事と呼べるほどの事をしていないけど、なんだか仕事を褒められたような、そんな嬉しさだった。そのおかげでさらに考えが浮かんでくる。
「じゃあ、花言葉でまとめた香り袋はどうですか?」
「というと?」
「パッと思いついたものですけど、例えば、恋の花言葉の花を集めた香り袋とか……恋の香りという名前で」
「それ! いいですね! 恋の香りがする花束香り袋、ありかもしれませんよ!」
 先ほどよりも興奮した様子で、ファーリスが言葉を発する。興奮したのかファーリスは私の手を掴んで少し踊る様に跳ねる。私も嬉しくなって、一緒に飛び跳ねた。
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