私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑

文字の大きさ
上 下
11 / 17

10

しおりを挟む
「今、どうせ暇なんだからいいじゃないとか思いました?」
 ファーリスが鋭く指摘する。私は目を泳がせてしまって、そう思った事がバレてしまった。ファーリスは私の両頬をつねって引っ張る。
「ごめんなひゃーいー」
 少しの間、そうやって謝ってやっと解放される。私は両頬を擦って、痛みを和らげようとした。
「まぁこれぐらいで許しましょう」
「自分で、流行らないとか言ってたくせに」
 私は苦し紛れに反撃の言葉を口にすると、ファーリスが大げさなしぐさで、つねる様な動作をして言った。
「まだ足りませんかねぇ」
「いえ! 充分反省しました!」
 少しふざけるように私は背筋をピンと伸ばして、敬礼をして見せる。満足げに頷いたファーリスはつねるような動作をやめた。私はなんだかおかしくなって、吹き出してしまう。それを見たファーリスも同じように笑った。なんて幸せな時間だろうか。私は心がとても温かくなるのを感じた。
 ひとしきり笑うとファーリスが手を一度叩き、それから話を始める。
「ところで、花の香り袋の件を覚えていますか?」
「はい! 覚えています、私が仕事に慣れるまでは、やめておくって話になった」
「はい……ナナさんの仕事ぶりに余裕が出てきたので、そろそろ手をつけようかと思いまして」
 余裕が出てきたけど、結局、課題を与えられて、その余裕は消えてしまう気がするけど。意外とこのお方は人使いが荒いかもしれない。私が心の中で少し毒づいていると、ファーリスは気づかない様子で、話を続ける。
「とりあえず、どういうコンセプトにするか、そこを決めようかと思いますが」
「そうですね! 方向性が決まらない事にはなんとも」
 私の言葉にファーリスが頷く。コンセプト。どういう物が良いだろうか。私は腕組みをして考え始める。
「はは、それもなかなか難しいですよね……ナナさんはどんな香りが好きですか?」
「香り……ですか」
 どんな香りが好きか、そんな事考えた事がない。香りに触れる機会なんて、食事の時くらいだった気がする。ご飯の匂いなんで言ったら笑われてしまうし。そう考えているうちに、食べ物関係で私はふと思いつく事があった。果物の香り。甘い匂いとか、酸味のある匂いとか。花でもできそうな物は何だろう。
「甘い匂いとか……ですかね」
「あぁ……もしかして食べ物から連想しました? 食いしん坊ですね」
 少し意地悪な笑みを零すファーリス。私は「もうっ」とファーリスの背中をバチンと平手打ちする。「そうですよ! 食べ物から連想しました!」
しおりを挟む

実はブログをやっています!
良かったら遊びに来てください!

小説の時間

キャラクターの説明や用語の説明、制作の裏話など、更新予定です!
また、ラノベ以外の小説はここに載せる予定です!
感想 5

あなたにおすすめの小説

田舎っぺ令嬢が悪役令嬢に仕立て上げられたが収拾がつかなくなったお話

下菊みこと
恋愛
田舎っぺ令嬢が幸せになるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?

せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。 ※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました

ことあるごとに絡んでくる妹が鬱陶しいので、罠にかけました

四季
恋愛
わがままに育った妹は、私の大事なものをことあるごとに奪ってくる。しかも父親は妹を可愛がっていてまっとうな判断ができない。 これまでは諦めるだけだった。 でももう許さない。 妹の特性を利用し、罠にはめるーー!

幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい

和泉鷹央
恋愛
 王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。  そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。 「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」 「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」 「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」 「えっ……!?」 「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」  しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。  でも、コンスタンスは見てしまった。  朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……  他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】仕方がないので結婚しましょう

七瀬菜々
恋愛
『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』 アメリアは静かな部屋で、自分の名を呼び、そう高らかに宣言する。 そんな婚約者を怪訝な顔で見るのは、この国の王太子エドワード。 アメリアは過去、幾度のなくエドワードに、自身との婚約破棄の提案をしてきた。 そして、その度に正論で打ちのめされてきた。 本日は巷で話題の恋愛小説を参考に、新しい婚約破棄の案をプレゼンするらしい。 果たしてアメリアは、今日こそ無事に婚約を破棄できるのか!? *高低差がかなりあるお話です *小説家になろうでも掲載しています

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

すべて『反射』してしまうようです

夜桜
恋愛
 辺境伯令嬢エイラは、子供のころはどん底の不幸だった。  不運が続く中、お見合いで伯爵と婚約を交わす。しかし、それは望まぬ婚約だった。婚約を破棄するも更に不幸が続く。  他の令嬢から嫌がらせを受けるようになっていた。  苦悩の中、幼馴染のブルースと再会。彼がいると幸せになれた。ブルースが近くにいると不思議な力『反射』を受動的に発動できたのだ。  反射さえあれば、どんな嫌な相手からの罵詈雑言も、事故や災難さえも『反射』する。決して不幸が訪れなかった。  そんなブルースを傍に置きたくてエイラは奔走する。

処理中です...