9 / 17
その頃、彼らは01
しおりを挟む
私が心を操る魔法と出会ったのは、市場の一角だった。おばあさんが訳の分からない物を売っていて、その中に魔導書があったのだ。裕福でもない平民だった私は、買えないのは分かっていながら市場を見て回っていた。その時、ふと一冊の本に目が止まった。私はすぐにその本を手に取り、開いてみた。
中には文字がびっしりと書かれていた。でもその意味をすぐに理解できた。その時、高い魔力とこの魔導書に書かれた魔法への適性が恐ろしく高い事も。
「読めるらしいね」
しわがれた声で店主のおばあさんが言う。
「他の人はそれを見ても何も書かれていないと言うんだよ」
「そう」
私はそこに書いてある魔法、一番簡単で今すぐにもできそうな基本の物を使った。
「ねぇ、おばあさん、この本貰っていい? もちろん無料で」
「いいよ」
ほとんど、ためらいもなくおばあさんはそう返す。満足げな笑顔をしたような気がしたけど、私は気にせず、本を持ってその場を離れた。
それからはとても順調だった。手に入れた魔導書の魔法を勉強して、理解して、実践する。そうすれば誰もが、私の言う事を聞いてくれる。そうやって魔法使いに家庭教師をお願いして、魔法を学ぶこともした。そのおかげで、貴族が通う魔法学校にも入学できた。
私は常に学年トップ。これは自分の実力で勝ち取った。わざわざ、試験官の心を操るほどでもないぐらい簡単だったから。そうしていると、いつも二位にいるナナというご令嬢の嫉妬心に気付いた。しかも彼女は次期国王であるマージルの婚約者。これは使えると直感した。
ナナの嫉妬心を操って、少し背中を押してやる。それだけで、思い通り私をイジメるようになった。同時にマージルにも近づいて、魅惑を使った。王子という重責に抱える物も多いらしく、簡単に操る事ができた。
そして、頃合いを見て、ナナにやりすぎてもらう。マージルにそれを目撃させて。上手くいきすぎて吹き出しそうになってしまった。つい私はナナに耳打ちをしてしまったけど、国外追放の手筈はマージルに整えさせていたから問題ない。すべてが思い通り、私とマージルは婚約した。
※
「ねぇマージル様」
薄暗い部屋で、私はマージルにまとわりつく。
「何だい? エリィ」
甘ったるい声で、マージルが返してくる。私は一度、マージルと唇を重ねてから、耳元で囁く。
「邪魔なお義父様を消して、あなたが一番になりましょう」
私の体が仄かに光り、一瞬だけ、部屋が照らされる。おかげで、マージルの表情が強張っているのが見えたけど、すぐに微笑みに変わるのも見えた。
中には文字がびっしりと書かれていた。でもその意味をすぐに理解できた。その時、高い魔力とこの魔導書に書かれた魔法への適性が恐ろしく高い事も。
「読めるらしいね」
しわがれた声で店主のおばあさんが言う。
「他の人はそれを見ても何も書かれていないと言うんだよ」
「そう」
私はそこに書いてある魔法、一番簡単で今すぐにもできそうな基本の物を使った。
「ねぇ、おばあさん、この本貰っていい? もちろん無料で」
「いいよ」
ほとんど、ためらいもなくおばあさんはそう返す。満足げな笑顔をしたような気がしたけど、私は気にせず、本を持ってその場を離れた。
それからはとても順調だった。手に入れた魔導書の魔法を勉強して、理解して、実践する。そうすれば誰もが、私の言う事を聞いてくれる。そうやって魔法使いに家庭教師をお願いして、魔法を学ぶこともした。そのおかげで、貴族が通う魔法学校にも入学できた。
私は常に学年トップ。これは自分の実力で勝ち取った。わざわざ、試験官の心を操るほどでもないぐらい簡単だったから。そうしていると、いつも二位にいるナナというご令嬢の嫉妬心に気付いた。しかも彼女は次期国王であるマージルの婚約者。これは使えると直感した。
ナナの嫉妬心を操って、少し背中を押してやる。それだけで、思い通り私をイジメるようになった。同時にマージルにも近づいて、魅惑を使った。王子という重責に抱える物も多いらしく、簡単に操る事ができた。
そして、頃合いを見て、ナナにやりすぎてもらう。マージルにそれを目撃させて。上手くいきすぎて吹き出しそうになってしまった。つい私はナナに耳打ちをしてしまったけど、国外追放の手筈はマージルに整えさせていたから問題ない。すべてが思い通り、私とマージルは婚約した。
※
「ねぇマージル様」
薄暗い部屋で、私はマージルにまとわりつく。
「何だい? エリィ」
甘ったるい声で、マージルが返してくる。私は一度、マージルと唇を重ねてから、耳元で囁く。
「邪魔なお義父様を消して、あなたが一番になりましょう」
私の体が仄かに光り、一瞬だけ、部屋が照らされる。おかげで、マージルの表情が強張っているのが見えたけど、すぐに微笑みに変わるのも見えた。
3
お気に入りに追加
288
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜
星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」
「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」
公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。
* エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛かどうかの問題じゃない
ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で?
よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」
完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?
せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。
※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ことあるごとに絡んでくる妹が鬱陶しいので、罠にかけました
四季
恋愛
わがままに育った妹は、私の大事なものをことあるごとに奪ってくる。しかも父親は妹を可愛がっていてまっとうな判断ができない。
これまでは諦めるだけだった。
でももう許さない。
妹の特性を利用し、罠にはめるーー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仕方がないので結婚しましょう
七瀬菜々
恋愛
『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』
アメリアは静かな部屋で、自分の名を呼び、そう高らかに宣言する。
そんな婚約者を怪訝な顔で見るのは、この国の王太子エドワード。
アメリアは過去、幾度のなくエドワードに、自身との婚約破棄の提案をしてきた。
そして、その度に正論で打ちのめされてきた。
本日は巷で話題の恋愛小説を参考に、新しい婚約破棄の案をプレゼンするらしい。
果たしてアメリアは、今日こそ無事に婚約を破棄できるのか!?
*高低差がかなりあるお話です
*小説家になろうでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる