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「ナナさん」
「はい?」
私は店番をしていた時、ファーリスから声をかけられて、振り向く。なんだろう。
「だいぶ慣れてきましたね」
微笑みながらファーリスは言った。私は嬉しくなる。早く役に立てるようになりたくて、一生懸命頑張った。それを認めてもらえるのは嬉しくて仕方がない。それに加えてそれを言ったのがファーリスならなおさら、浮かれてしまう。
「という事で、一つ課題を出します」
「え! 課題ですか」
私は背筋をピンと伸ばして、姿勢を正した。それを見てファーリスは吹き出す。
「なんですかぁ」
少し拗ねたように私は抗議した。真面目にやっただけに、そう言う反応はなんか恥ずかしい。
「いえ……すみません」
笑が少し落ち着いたファーリスがコホンと咳ばらいをすると言葉を続ける。
「そんなに硬くならなくてもいいですよ、気軽に取り組んでもらえば、期限も設けませんし」
「そうですか、わかりました」
私の言葉を聞くと、ファーリスが頷いて、隠していたらしい花束を見せる。綺麗な花束だ。色は種類があるけど、花自体はすべて同じ種類に見える。私は花束を受け取ると、ファーリスを見つめた。
「それが課題です、花の名前と……花言葉を自分で調べて報告してください」
なぜだかファーリスが赤くなってモジモジとする。どうしたんだろう。私は首を傾げつつ、花に目をやる。一本の茎にランダムに小さな花が沢山ついている。花弁をよく見ると、上と下で形が違って、ちょっとウサギに見えなくもない感じ。やっぱり、全部、同じ種類の花で色だけが何種類かある。赤、ピンク、白、紫、黄色だ。花言葉はきっと色は関係ないというのを伝えるためだろう。葉っぱは平たい感じの物。香りはする気がするけど、よくわからない。
ある程度の分析を終えると、私はファーリスを見る。
「一応、聞きますけど、答えはわかりましたか?」
「いえ、全然」
「……そうですよね」
一瞬だけ残念そうな表情をしたファーリスが、微笑んで言葉を続ける。
「図鑑を使って調べてみてください、その時、きっと他の花の事も目に入ると思うので、覚えやすくなると思いますよ、それと僕の魔法で萎びてしまうのを遅らせていますが、それでも枯れてしまったら、またお見せします」
「わかりました」
ファーリスが花瓶を用意してくれて、私は貰った花束を活ける。さっそく調べてみようかと気合を入れて、図鑑がある居住スペースの方に行こうとすると、それをファーリスに止められた。
「お店の仕事優先です」
「そんなぁ」
クスリといじわるな笑みを浮かべるファーリス。そのまま店の方に押し戻される。意地悪だ。言っちゃあなんだけど、どうせ暇なんだからいいじゃない。
「はい?」
私は店番をしていた時、ファーリスから声をかけられて、振り向く。なんだろう。
「だいぶ慣れてきましたね」
微笑みながらファーリスは言った。私は嬉しくなる。早く役に立てるようになりたくて、一生懸命頑張った。それを認めてもらえるのは嬉しくて仕方がない。それに加えてそれを言ったのがファーリスならなおさら、浮かれてしまう。
「という事で、一つ課題を出します」
「え! 課題ですか」
私は背筋をピンと伸ばして、姿勢を正した。それを見てファーリスは吹き出す。
「なんですかぁ」
少し拗ねたように私は抗議した。真面目にやっただけに、そう言う反応はなんか恥ずかしい。
「いえ……すみません」
笑が少し落ち着いたファーリスがコホンと咳ばらいをすると言葉を続ける。
「そんなに硬くならなくてもいいですよ、気軽に取り組んでもらえば、期限も設けませんし」
「そうですか、わかりました」
私の言葉を聞くと、ファーリスが頷いて、隠していたらしい花束を見せる。綺麗な花束だ。色は種類があるけど、花自体はすべて同じ種類に見える。私は花束を受け取ると、ファーリスを見つめた。
「それが課題です、花の名前と……花言葉を自分で調べて報告してください」
なぜだかファーリスが赤くなってモジモジとする。どうしたんだろう。私は首を傾げつつ、花に目をやる。一本の茎にランダムに小さな花が沢山ついている。花弁をよく見ると、上と下で形が違って、ちょっとウサギに見えなくもない感じ。やっぱり、全部、同じ種類の花で色だけが何種類かある。赤、ピンク、白、紫、黄色だ。花言葉はきっと色は関係ないというのを伝えるためだろう。葉っぱは平たい感じの物。香りはする気がするけど、よくわからない。
ある程度の分析を終えると、私はファーリスを見る。
「一応、聞きますけど、答えはわかりましたか?」
「いえ、全然」
「……そうですよね」
一瞬だけ残念そうな表情をしたファーリスが、微笑んで言葉を続ける。
「図鑑を使って調べてみてください、その時、きっと他の花の事も目に入ると思うので、覚えやすくなると思いますよ、それと僕の魔法で萎びてしまうのを遅らせていますが、それでも枯れてしまったら、またお見せします」
「わかりました」
ファーリスが花瓶を用意してくれて、私は貰った花束を活ける。さっそく調べてみようかと気合を入れて、図鑑がある居住スペースの方に行こうとすると、それをファーリスに止められた。
「お店の仕事優先です」
「そんなぁ」
クスリといじわるな笑みを浮かべるファーリス。そのまま店の方に押し戻される。意地悪だ。言っちゃあなんだけど、どうせ暇なんだからいいじゃない。
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