私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑

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 その言葉の後、すぐにファーリスが微笑みを見せた。
「むしろ僕の方から、お願いしたかったくらいです」
「本当ですか?! 嬉しい! 頑張ります!」
 私はガッツポーズに力が入りすぎて、体を縮こまる。その様子を見て、ファーリスが可笑しそうに笑った。私は少し恥ずかしくなり、顔を赤くしながらも、笑い返す。次第に二人の笑い声は大きくなる。あぁ、幸せだ。とても。
 二人の楽しい時間が少し落ち着いた頃、ファーリスがさて、と立ち上がる。
「店を開けます、少し開店時間が遅れてしまいましたが」
「あっ、すみません! 私のせいで」
「そんな事ありませんよ、元々流行っていない店なので、いつ開けても同じです」
 苦笑してファーリスが言う。私は言葉に困り、黙ってしまう。そうしているとそれに気づいたファーリスが「困りますよね、すみません」と苦笑を続けたまま言った。
「あっ、お詫びと記念に花を」
 思いついたようにファーリスが花壇に移動して、花を一つ持ってくる。白い花で先だけが赤くなっている。
「フッキソウと言います、花言葉は良き門出」
「ありがとうございます!」
 良き門出。今日を表す花にぴったりだった。受け取ったフッキソウもなんだか生き生きしている気がして。私は嬉しくなる。
「行きましょう」
 店の方に移動して行くファーリスに私は続く。受け取った花はオーバーオールの前面についたポケットに、見えるように差し込んで。



 店を開けて、ひと段落しても、お客さんは現れない。流行っていないというのは、否定できない状態。
「とりあえず、いろいろと説明しないといけないので、暇な方が都合がいいですよ」
 気にしていない風にファーリスが笑う。それもどうなんだろうと思いつつ、私はファーリスに体を向ける。
「ここは見ての通り花屋です」
「はい」
「それともう一つ、僕は魔法使いです」
「そう……なんですか」
 魔法の才能というのは貴族に多く現れる。平民には滅多に現れないのが世の常だ。ファーリスは貴族には見えないし、平民でありながら魔法の才能を持って生まれたという事だ。ただ花屋と関係ある話に思えない。
「唐突に思えるかもしれませんが、ちゃんと関係ある話ですよ」
 少しいたずらっぽく笑うファーリス。そのまま言葉を続ける。
「ここにある花は本来、咲く季節がバラバラなんです」
「そうなんですか」
 つまりありえない事が起こっているという事。私は納得する。魔法が関係ある話だった。
「察しがついたみたいですね、つまりここの花は僕の魔法で、咲くタイミングを変えている訳です」
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