私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑

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「そんな事が……わかりました、とりあえず僕の家に行きましょう」
「ありがとうございます!」
 助かった。私は男の人に駆け寄る。
「私はナナです、本当にありがとうございます」
「いえ、僕はファーリスです……行きましょうか」
 ファーリスは私を安心させようとしているのか、微笑んでそう言うと、エスコートする様に私の手を優しく持ち上げる。ドキリ、として顔が熱くなるのを感じた。そして、エスコートされるように歩き出す。
「そうか……気付かなくて、ごめんなさい」
 少しだけ歩いたところで、ファーリスが気づいたように声をあげて立ち止まる。私は何だろうと思ってファーリスを見ると、いきなり体がフワリと持ち上げられた。
「ふぁぁっ」
「……裸足なのに歩かせようとしてしまいました」
 お姫様抱っこの形。そのせいでファーリスの顔がすこぶる近い。私はあごを引いて、縮こまる様になってしまう。そんなんで体重は変わらないのだけど。
「面白い方ですね、そんな風にしても重みは変わらないのに」
 笑顔でファーリスはそう言った。私が考えた事をファーリスも考えた。そんな事で私は体が軽くなった様に嬉しくなる。
「近くに馬を待たせています、そこまで辛抱してください」
 そう言いながらファーリスが歩き出す。辛抱なんてそんな。むしろ幸せ。でも案外近くにいた馬にたどり着いてしまって、幸せはすぐに終わり。見える範囲なのに気付いていなかった。ファーリスは私を馬に横乗り状態にして、自分も馬に乗る。ファーリスの足と腕に挟まれた状態で、私はまた幸せを感じていた。
「僕も気をつけますけど、落ちないように捕まっていてくださいね」
「……はい」
 必要以上に私はファーリスの胸に体を預け、抱き着く様に腰に手を回す。花のいい匂いがした。
「じゃあ行きます」
 馬が走り出す。少し遅めのスピード。私に気を使ってくれている様だ。優しい方。しばらくそんな幸せな時間が続いた。



 ファーリスの家に到着すると、中へと案内された。想像していたよりだいぶ違う家だった。いや、家というより店だ。花が沢山並んでいる店。
「ファーリス様、これって」
「様はやめてくださいよ……僕は花屋なんですよ」
 ファーリスは少し照れたようにそう言うと、そのまま続ける。
「男なのに花屋って変ですよね」
「そんな! 全然変じゃないです! むしろ素敵で」
 私の言葉に照れた笑みを浮かべるとファーリスは「こっちです」と店になっている所から奥へ入り、居住スペースに案内してくれた。
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