私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑

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 私はあてもなく歩き続けた。無限に続くかと思った草原も終わって、次は花畑が続いた。咲き乱れる花を見て、少しは癒されたけど、それだけ。依然としてここがどこなのかわからない。
「本当にどうすればいいのか」
 私は一旦立ち止まると、しゃがみ込んで花を見つめる。花の事なんて、全く興味を抱いた事がないから、なんて言う花なのか見当もつかない。よく見ると、それぞれ違う花だ。当たり前か。じっと眺めていると、花が風に揺れる。白い花もあれば、ピンクの物も、黄色もある。
「よく見ていれば、癒されるかも」
 さっきは少しだけ癒された気になってたけど、今は違う。なんだか心地が良い。花は良い物だな。私はそう思って、しばらく花を見つめていた……すると、その先に何かが動いている。何だと思って立ち上がると、男の人がうずくまって、何かをしていた。
 誰もいないかと思っていたけど、花に紛れて見えていなかっただけだ。思わず私は声を出してしまう。その声に反応して、勢いよく男の人が顔をあげてこちらを見る。
「こっ、こんにちは」
「こん……にちは」
 男の人が挨拶をして来て、私も戸惑いつつ挨拶を返す。変な人かと思ったら、なかなかイケメンだ。少し長めのライムグリーンの髪に、濃いブルーの瞳。ズレてしまった眼鏡を戻して、男の人は座った姿勢から立ち上がる。思ったより身長は高くなく、私より少し高いくらいだ。簡素な茶色の作業着に妙に釣り合いがない、学者然とした雰囲気。
「こんな所で何を? しかもその恰好」
 私は男の人にそう問われて初めて自分の格好に気を向ける。一度牢屋に入れられて、すべての服と持ち物を取り上げられて、布の袋に穴を開けたような服を着せられた。その中は下着さえつける事を許されず、裸状態。靴も履いていないから、明らかにおかしな格好だった。
「これは!」
 一気に恥ずかしくなる。布一枚でほとんど裸なのだ。透けて見えていないか、不安になり、服を撫でる。厚手で恐ろしくごわついた布。おかげで透けてはいないだろう。
「……助けてほしいです、今まで捕まってて、突然ここに放り出されて、困ってて」
 よくもスラスラと嘘が出てくる。でも罪人というのはバレたくない。バレてしまえば、助けてもらえない。私の中で罪悪感が広がる。私の様な石ころはどっかで野垂れ死んだ方が良いのかな。そう考えてから、自分で驚く。さっきもそうだけど、驚くほど、毒気が抜けてしまったと思う。ある意味、あの悪女のおかげで改心出来てしまったらしい。
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