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第三章

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 私はドレグとニールに声をかけて、こちらに呼び寄せる。二人とも、足取りが重い。心が折れる寸前かもしれない。私はどうすればいいか悩む。ボスはいなかった。その事実は、変わらないのだ。どうする事も出来ない。
「さっきも言ったけど、あの廃村には、ボスはおろか、影の魔物一体も、いなかった」
 重苦しい空気が流れる。みんなを代表して、シルクが口を開く。
「これで、この場所には、いない事が確認できたのです、クロエ様を信じましょう」
「……そうですね」
 ポツリとエネリーが言った。言葉に覇気がない。おそらく、シルクの言葉は響いていない。ニールもドレグも同じように、同意するけど、同じように、覇気が感じられない。
 みんなが城へ戻るために、それぞれが自分の定位置に移動する。動きがとても、重たい。ダラダラしているわけじゃないのに。
「ふぅー」
 私は大きく息を吐いた。なんだか、胸の辺りに、どろりとした、重たい物が、へばりついているような気がして。
「リコ様が、責任を感じる事では」
 シルクがそう言ってくれる。
「ありがとう……この子」
 私は女の子に視線を移す。
「起きたら、何か知ってるか、聞こうか」
「……そうですね」
 何か言おうとしたのか、シルクは少し言い淀んでから、そう言った。
「ん……あぁっ、あぁぁ!」
「な?!」
「え?!」
 私とシルクが同時に驚く。突然、女の子が声をあげた。苦しむ様な、そんな声だ。
「なんですかな?!」
 外まで聞こえたらしく、ドレグが急いで馬車を覗き込む。
「突然、女の子が苦しみだして」
 すぐさま、馬車を停めたエネリーが、荷台の方へやってくる。
「なっ、なにこれ?!」
 女の子が苦しみだすと同時に、黒いモヤが、女の子から、あふれ出し始めた。
「がぁっ、がぁぁぁぁ!」
 女の子が、そう声をあげると、起き上がり、馬車の外に飛び出していく。
「なっ」
 私はとっさに、女の子を追う様に、馬車から飛び出した。
「がぁぁぁ!」
 女の子が、そう声をあげると、体から染み出している黒いモヤが、影の魔物へと変わっていく。そうやって、女の子の周りに、影の魔物が、何体も現れた。
「うわ、あの子から、影の魔物が出てきたっす!」
「私もそう見えた」
「何が、起こっているのですかな?!」
「わかんないけど、戦わないといけないよ、これ」
 影の魔物はかなり増えている。ざっと見ても十体以上。これはヤバイ。
「影の魔物を生み出しているあの子を、私が速攻で倒すから、みんな何とか、持ちこたえて!」
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