上 下
25 / 49
第二章

12

しおりを挟む
 シルクが、コホンと咳払いして、言葉を続ける。
「作戦、戦い方についてです」
 シルクの、さっき聞いた言葉から、なんとなく想像は出来る。
「作戦としては、私と兵士三人で馬車を守って、リコ様が単独で戦う、ですね」
「あぁ、そういう事なのね、やっぱり」
 危険な所に特攻させられる。その言葉は、そういう意味だった。
「本人がいないところで、決めてしまった事は申し訳ないですが」
「私が、朝起きなかったから、了承を得られなかった訳ね」
 私が苦笑しながら、そう言うと、シルクが「はい」と頷く。実は、信用されていないか、本当に捨て駒扱いか。私はすぐに諦める。しょうがないのだ。状況を考えれば。突然、現れた私の様な存在は、そういう扱いが妥当である。
「一応、釈明というわけではないですが、理由を説明します」
 特に気にする素振りもなく、シルクが、話を続けた。
「いろいろな事情から、リコ様に特攻をお願いする形になりました」
「どういう事情?」
「一つは兵士の実力です、まぁリコ様にはわかると思いますが」
 私は少し考える。影の魔物が何度か襲撃してきたけど、あの三人は一体も影の魔物を倒せていない。エネリーはそもそも、戦っていないけど、ニールはもちろんの事、ドレグでさえ、一対一で勝てないのだろう。
「察した」
「話が早くて、助かります」
 正直、足手まといだ。近くで、殺されそうなのを、見て見ぬふりは、できない。そうなると、守ってやらないといけない。雑魚だけなら、それでもいけるけど、ボスはそうはいかないだろう。
「そういう事で、あの三人は馬車を守ってもらいます」
「三人で守り切れないよね」
 実力の問題があるから、当然、三人だけで馬車を守るのは、心もとない。となると。
「シルクも残って、四人で馬車を守るって事か」
 シルクと戦ったから、実力は把握している。影の魔物を、一人でも倒せるだろう。遠距離攻撃タイプだから、近づいてくる前に倒す事ができれば。何とかなりそう。
「馬車の護衛はケガ人が出た場合や、リコ様が動けないほど、体力を消耗した場合を、想定しています、例え全員、動けなくなっても、馬車で何とか移動できます」
 嫌な想定だけど、最悪を、考えておかないといけないのは、理解している。
「まぁ、一人で頑張るよ」
 私は、気合を入れなおすように、残ったサンドウィッチを口に放り込む。シルクがサンドウィッチを食べ終わるの見て、紅茶の様な物を、コップに注いで渡してくれた。
「あっ、いい匂い」
 フルーツの様な甘い香りのする。口に含むと、香りとほのかな甘みが広がる。
「クリンジュースです」
「クリン?」
 聞いた事ないのは当然として、どういう物だろう。完全に正体不明の物だと、ちょっと不安になる。透き通ってるけど、色が赤っぽいけど、生き物の血とかじゃないよね。
「果実ですが……知らない様ですね」
「どういう物か想像もできない」
 ただ、私は果実と聞いて、安心する。生き物の血がこんな味の訳がない。
「クリンは持ってきていないです、あまり、保存がききませんので」
「気になるな」
「作戦が成功すれば、祝賀会です、そこで見れるでしょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おじさんが異世界転移してしまった。

月見ひろっさん
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

処理中です...