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第二章

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「実力が足らないけどね」
 事実を私はズバリ言っておく。思いだけではどうにもならないのは、どこの世界でも一緒だから。
「そこは……これから」
 エネリーが苦笑しながら言った。そこにシルクが、思いついたような表情をして、口を開く。
「リコ様が、鍛えてあげればいいのでは?」
「え? 私が? ドレグさんがやるでしょ」
「剣に関しては、リコ様が一番ですよ」
 パッと顔を明るくして、エネリーが言う。一番と言われると、ちょっと嬉しいけど。
「そもそも、使う技が違う、戦い方も違う、そういうの教えるのは、面倒なんだよ」
 フェンシングの選手に、剣道の先生が教えるぐらい違う。それこそ、変な事になって、逆に弱くなりかねない。
「そう言わないでくださいよ」
 私の両手を握って、エネリーがあたかも、ねだっている様な口調をする。クソ、可愛いな。ちょっと冗談っぽいのがまた。
「……まぁ、アドバイスくらいなら」
 私が折れて、そう言うと、エネリーが「やったぁ」と小さいジャンプをして、喜ぶ。本人不在で勝手にお願いして、勝手に決めて、たいがいではあるが。
「盛り上がっていますな」
 いきなり聞こえてきたドレグの声で、エネリーが顔を赤くして、縮こまる。その姿を見たドレグが、不思議がる表情を浮かべた後、みんなに向かって言った。
「そろそろ、出発しますぞ」
 ドレグの言葉で、みんなが動き出し、馬車が動き出した。元の道とはズレた道を進んでいく。私は馬車の外を眺めながら、ボー、としていた。何もなければ、暇な時間である。私は暇を持て余し、エネリーに声をかける。
「エネリーは、この作戦に選ばれたの? それとも立候補?」
「私は、選ばれました」
「そうなんだ、少数精鋭って聞いてたから、エネリーは精鋭なんだね」
 私のその言葉にエネリーが少し、照れ笑いを受けべながら、謙遜する。
「そんな事は……私は、強くはないですし、唯一のとりえは、馬の扱いが得意って事くらいで」
「それで、エネリーが馬車の運転手してるんだ」
 エネリーは見た目通り、強くないらしい。兵士っぽくないしな。
「運転手……正式には、御者(ぎょしゃ)といいうんですけどね」
 エネリーがそれとなく、訂正してくれる。ちょっと、私は間違いを恥じながら、疑問に思った事を聞いてみる。
「なんで、エネリーは兵士になったの? なんていうか、イメージと合わないというか、らしくないというか」
 ちょっと失礼な感じになってしまったかな、と私は思いつつ、エネリーの言葉を待った。
「やっぱり、向いてないですよね」
 シュンとしたエネリーを、私はすぐにフォローしようとする。
「いや! そういう意味ではなく!」
「いいんですよ、私は兵士には向いてないのは、自分でもわかってるので」
 私があわあわとしていると、後ろからシルクが、私の頭を叩いてから、エネリーに優しく声をかける。
「向いてるかどうかなんて、もっと長くやってみないと分かりませんよ、大丈夫です」
 シルクの言葉に、私は同意する声をあげる。
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