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第二章

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 私は口ごもる。基本的に私は、朝までぐっすり寝てもいいみたいな、雰囲気があるけど、それもみんなが見張りをしてくれるからで、それ以上のワガママをなかなか言い辛い。
「三人で当番ですよね」
 私が口ごもり続けていると、シルクが助け舟を出すように言葉を続ける。
「見張りの当番じゃない時は、この中で私たちと一緒でも構いませんよね」
「さすがに、リコ様やシルクさんと同じところで、一介の兵士が休むのは」
 ドレグが少したじろぐのを見て、私はすかさず「私は歓迎だよ」と突っ込む。シルクもそれに同意した。
「まぁ、二人がそれでよいのなら、よいですが」
 ドレグがすごすごと元の定位置の下がっていく。私は少し勝ち誇りながら、シルクとエネリーに親指を立てて見せた。
「ふふ、楽しみです、女の子が周りにいないから、こういうの経験無くて」
 頬を赤くしてエネリーがそう言う。
「兵士って男社会だもんね、たぶん」
 兵隊とか、軍隊とか、そういう物をよく知らないけど、私のイメージでは、そんな感じだ。
「大変そう、体力とかそういうの」
 私の言葉に反応して、ニールが馬車の前方まで、移動してくる。
「意外と、そんな事ないっすよ」
「そうなの?」
「エネリーは、守ってあげたくなる感じがするもんだから、隊の男はお姫様扱いっすよ」
 ニヤニヤしながらニールが続ける。
「エネリーは無理するな、エネリーは剣なんて持たなくていい、そんな感じっす」
「剣を持たなくていいというのは、全力で断りましたが」
 困った様にエネリーが笑うと、そのまま言葉を続ける。
「皆さんが良くしてくれるのは確かですね」
 私は確かに、守ってあげたくなる気持ちが判った。天使のように微笑むエネリーの顔は可愛い。少し気弱な感じの印象も、天使感を引き立てる要因だろう。
「しかもっすよ」
 ニールが私たちに近づいて、少し、声のボリュームを下げる。
「あのドレグさんが拳骨する時、唯一、手加減するっすよ、コツッって」
「私にさえ、思いっきり拳骨したのに」
 首をかしげながら私が言うと、シルクが「妥当ですが」とほざく。
「手加減してるんですか? 痛いですよ」
 思い出したように、頭を少しさすると、エネリーはそう言う。
「まぁ、エネリーのそういうとこ、男は弱いっすよ」
 ニヤニヤしつつ、ニールが元の定位置に戻っていく。エネリーは首を傾げて、ニールの言葉の意味を、考えているようだった。多分、予想では、コツッとされたエネリーは、いたぁぁい、と言って、両手で頭を押さえて、ちょい涙目上目遣いで、相手も見るのだろう。
「はぁ……おしゃべりの時間は終わりのようです」
 私がほっこりしていると、シルクの厳しい声が聞こえた。
「どういう……」
 油断しすぎていたらしく、私はシルクの言葉が、すぐに理解できなかった。でも、その姿を見て、すぐに理解する。
「来たね、影の魔物」
 私はそう言いながら、馬車を飛び降りる。何事もなく、目的地に着けるかもと、少し期待していたけど、さすがにそれはないらしい。
 私は馬車の前方から現れた、一体の影の魔物と対峙する。その時、ドレグの声が響いた。
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