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第一章
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逆に恐ろしい。見えない物が飛んでくるなんて。私は良く反応できたなと自分で感心する。
「というか、横からとか、びっくりしたよ、てっきり真っすぐ飛ぶだけかと思ってた」
「そう思わせるために、真っすぐしか撃ってませんでしたので」
「あぁ、そういう」
見事に騙された訳か。中々の策士だ。しかも、嫌らしい事に、右側面から飛んできた。刀を抜く際、右足を踏み込んで、右肩を前に突き出し、半身状態になる。やや左側面を、向くことになるので、右側面は死角になる。そこを狙ってきたのだ。シルクはただのメイドなら、中々に戦闘センスがある。
「でも、魔法かぁ、シルクは他にどういう魔法が使えるの?」
私の言葉にシルクは首を横に振った。
「これだけですよ、私は魔力が少なすぎて、魔法らしい魔法は使えません」
「あぁ……そうなんだ」
そういう事もあるのか。私はいまいち分からないという顔で呟く。少し考えた素振りを見せたシルクが口を開く。
「一応、魔法について、軽く教えておきましょうか」
私は魔法という言葉で、あまりイメージできなかった。アニメだったり、マンガだったりで出てくるのは、知っているけど、そもそも、そういう物を、たしなんでこなかった。
「まずは魔法を使える人間についてです」
シルクが少し考える素振りを見せて、続ける。
「何と言ったらいいでしょう、特別な才能……それとは違うのですが、使える人間は限られます……ただ、誰でも使える可能性がある」
「ん?」
使える人は限られるけど、誰でも使えるかもしれない。矛盾とまでは、いかないけど、要領を得ない説明だ。私は首をかしげてしまう。
「えっと」
シルクが口ごもる。説明が難しいらしい。
「使える人間は、なぜ使えるのか、感覚で理解できるのです、言葉にするのは難しい」
「……そうなんだ」
「言葉で、説明できる物があるとすれば、ある日、突然、手に入れた品が、魔法を使うための道具だったりするのです」
ますます、要領を得ない説明だ。
「人間にはそれぞれ、魔法を使うための、世界に一つだけのアイテムがあって、それに出会えれば、魔法を使えるようになります」
「あぁ、なんとなくわかった」
そのアイテムに出会えなければ、魔法は使えない。誰でも可能性だけは持っている。そういう事か。
「ちなみに、シルクのアイテムはなんだったの?」
「私はこのメイド服です」
「あっそれで」
生まれながらにメイドという言葉は、あながち間違いではなかった。シルクは、このメイド服が、運命のアイテムだったという事は、最初からメイドになる事が決まっていた様な物だ。
「でも、服がアイテムだと、不便そうだね、破れちゃったりとか」
「そうでもありません……アイテムには、不思議な力が宿っていますから、例えば」
そう言って、シルクが、屈んでメイド服の袖を地面に擦る。メイド服の袖の辺りが、汚れてしまった。
「見てください」
「というか、横からとか、びっくりしたよ、てっきり真っすぐ飛ぶだけかと思ってた」
「そう思わせるために、真っすぐしか撃ってませんでしたので」
「あぁ、そういう」
見事に騙された訳か。中々の策士だ。しかも、嫌らしい事に、右側面から飛んできた。刀を抜く際、右足を踏み込んで、右肩を前に突き出し、半身状態になる。やや左側面を、向くことになるので、右側面は死角になる。そこを狙ってきたのだ。シルクはただのメイドなら、中々に戦闘センスがある。
「でも、魔法かぁ、シルクは他にどういう魔法が使えるの?」
私の言葉にシルクは首を横に振った。
「これだけですよ、私は魔力が少なすぎて、魔法らしい魔法は使えません」
「あぁ……そうなんだ」
そういう事もあるのか。私はいまいち分からないという顔で呟く。少し考えた素振りを見せたシルクが口を開く。
「一応、魔法について、軽く教えておきましょうか」
私は魔法という言葉で、あまりイメージできなかった。アニメだったり、マンガだったりで出てくるのは、知っているけど、そもそも、そういう物を、たしなんでこなかった。
「まずは魔法を使える人間についてです」
シルクが少し考える素振りを見せて、続ける。
「何と言ったらいいでしょう、特別な才能……それとは違うのですが、使える人間は限られます……ただ、誰でも使える可能性がある」
「ん?」
使える人は限られるけど、誰でも使えるかもしれない。矛盾とまでは、いかないけど、要領を得ない説明だ。私は首をかしげてしまう。
「えっと」
シルクが口ごもる。説明が難しいらしい。
「使える人間は、なぜ使えるのか、感覚で理解できるのです、言葉にするのは難しい」
「……そうなんだ」
「言葉で、説明できる物があるとすれば、ある日、突然、手に入れた品が、魔法を使うための道具だったりするのです」
ますます、要領を得ない説明だ。
「人間にはそれぞれ、魔法を使うための、世界に一つだけのアイテムがあって、それに出会えれば、魔法を使えるようになります」
「あぁ、なんとなくわかった」
そのアイテムに出会えなければ、魔法は使えない。誰でも可能性だけは持っている。そういう事か。
「ちなみに、シルクのアイテムはなんだったの?」
「私はこのメイド服です」
「あっそれで」
生まれながらにメイドという言葉は、あながち間違いではなかった。シルクは、このメイド服が、運命のアイテムだったという事は、最初からメイドになる事が決まっていた様な物だ。
「でも、服がアイテムだと、不便そうだね、破れちゃったりとか」
「そうでもありません……アイテムには、不思議な力が宿っていますから、例えば」
そう言って、シルクが、屈んでメイド服の袖を地面に擦る。メイド服の袖の辺りが、汚れてしまった。
「見てください」
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