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第一章

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 私は動きやすさを確認するために少し、ジャンプしたり、大きめに、一歩踏み出したりしてみる。刀を腰に帯びて、さらに動いてみる。
「うん、機能性も良い」
「……そうですか」
 やっぱり、素っ気ないシルクだけど、きっとそういう性格なのかな。
「服作るの好きなの?」
「そんなに……それでは少し用がありますので、一度失礼します」
 早口でそういうと、シルクは足早に部屋を出て行ってしまった。
「いきなり、そんなに仲良くなれる訳ないか」
 とりあえず、焦らずに行こう。自分の適応力の高さにちょっと驚きつつ、私は刀を机に立てかけながら、ベッドに腰かける。
 よく考えてみるとすごい事になった。起きたら、突然、知らない世界に来てて、訳の分かんない物と戦って。ただ、行方不明になったという先祖の事が少しわかった。家宝の刀もこの世界にあって、猫爪流居合術の理解が深まった。
「技の意味が少しわかった、妖刀・木天蓼(マタタビ)この刀がないとそもそも成り立たない技」
 猫爪流居合術には、壱から八までの技がある。壱から三の技は基本の技で、いわゆるただの居合斬り。でも、それ以降が理解できていなかった。無心になって、刀を少し抜き、という部分があるけど、おそらく妖刀の力を、強めに発揮するためだろう。
「ちょっと嬉しいな」
 時間がある時にこの刀で稽古してみよう。新しい発見があるはずだ。



「リコ様……よろしいですか?」
 私が部屋でゆっくりとしていると、ドアの外からシルクの声が聞こえてくる。なんだろう。私は「いいよ」と声をかけて、シルクを部屋の中に招き入れる。
「どうしたの?」
 少し前まで自作の服を見せて、恥ずかしそうにしていたシルクが、すました表情で言った。
「クロエ様が執務室まで来てほしいとの事です」
「なんだろう……」
 さすがにこのまま、旅行気分ではいられないという事かな。緩んでいた気持ちを引き締めながら、私はシルクについて、城の中を歩いていく。
「ところで」
 私は歩いている最中にシルクに声をかける。シルクはこちらに振り向くことなく、歩いたまま、言った。
「なんでしょう?」
「……私にくらいは口調を楽にしてほしいなぁ」
「……検討します」
 それだけ言うと、シルクはスタスタと歩き続ける。多分、年齢は同じくらいの女の子だし、仲良くしたいな。そんな事を考えていると、いつの間にか、執務室に到着した。私は気を引き締める。
「失礼します、リコ様をお連れしました」
 シルクがドアに向かって、そう声をかけると、中からクロエの声が聞こえてくる。
「入ってくれ」
 中に入るとクロエが大きな机に着席していた。
「座ってくれ」
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