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第一章

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 シルクは一瞬、顔が強張ったがすぐ「はい」とすました顔で返事をした。やっぱり、いきなりよくわからない人間のメイドになるのは、嫌かな。ちょっとショック。
「どこかに空いてる部屋はあったな、シルク、リコに部屋を用意してくれ、どこの部屋を使うか、後で報告してくれれば、構わない」
 それだけ言うと、クロエは部屋を足早に出て行った。
「では……ついて来てください」
 少し、冷たい言い方でシルクがそう言うと、外に出て行ってしまう。
「あっ、まって」
 私もシルクについて部屋を出た。しばらく歩いて、一つの部屋の前にやってくる。
「ここを使ってください」
 シルクが部屋の扉を開けながらそう言った。どれくらいのランクの部屋かわからないけど、さすがにお城の一部屋なだけあって、二十畳くらいの広さで、家具も一通りそろっている。
「すごい……広い部屋、こんなにいい部屋、使っていいの?」
「これでも一番、狭い部屋でしたが」
「あっそうなの」
 やっぱり少し冷たい感じのシルク。ちょっと悲しくなりながら、私は部屋に入る。
「ちなみに、リコ様のお召し物は正装ですか?」
「あっ」
 いろいろありすぎて忘れてた。寝て、起きた状態だったから、甚平姿だ。裸足だし。
「ちがう……ね、これは寝間着なんだよね」
「伝え聞く、英雄様のお召し物とは違ったもので、やっぱり、正装ではありませんか」
 困った。ずっと寝間着というのも、女子としてどうかと。
「よかったら、ですが」
 少し、顔を赤らめ、口ごもりながらシルクが続ける。
「英雄様のお召し物を参考に……作った服があるのですが」
「本当に?! 着たい!」
 稽古は袴でやってるし、慣れているからそっちがいい。何より和服は好きだ。私がテンションをあげていると、シルクがより顔を赤らめる。ちょっと嬉しかった。冷たい感じもこれで無くなったら、一石二鳥。
「実はこの部屋に置いてあります」
 そういうとシルクがクローゼットを開ける。そこから、アレンジのかかった袴を出してくる。
「可愛い……ッ!」
「……ありがとうございます」
 シルクが恥ずかしそうにしながら言った。見せてくれた袴は上が薄紫で花柄が書道で書かれた様な感じ、下が紺色の袴。
「着てもいい?」
「……はい」



 さっそく袴を着てみる。中々、可愛いと思う。靴はこの世界の革の靴だけど、なんかそれがまたいい感じだ。髪もポニーテールにしてみる。ハイカラさんという感じだ。
「……まぁまぁです」
 シルクが急に恥ずかしくなったのか、素っ気なくなる。
「本当にありがとうね!」
「……はい」
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