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第一章

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 背中が痛い。少しづつ覚醒する頭で、そんな事を考えた。ベッドで寝てたはずなのに。すごい寝相が悪くて、床に落ちたんだろうか。それにしても、なんだうるさい気がする。誰かが外を走り回っているような。私は寝起きの、ぼやけた視界を取り払う様に、顔を両手でこする。
「あれ?」
 はっきりとした視界に映ったのは、見慣れない部屋。西洋の鎧や武器が、たくさん並んでいる。私には、こんな物をコレクションする趣味はない。明らかに、自分の部屋ではない。私はキョロキョロと見回すと、さらにおかしな物があった。それは西洋の物が並ぶ中で、かなり異質な物。一振りの日本刀がそこにあった。
「何でこれだけ……他は西洋の物なのに」
 それにしてもこの刀、すごい惹かれる物がある。近くにいるだけで、安心感を感じるような。私が刀に見入っていると、後ろの方でドアが開く音がする。
「クソッ、どうして城の中まで入ってきている!」
 棚があって見えないが、その向こう側で女性の声がした。かなり切羽詰まった声。私は棚の影から、声がする方を伺い見る。身長高めの女性だ。引き締まっていて、少し焼けた健康的な肌に、金色の髪のポニーテール。服装は男性物に見える。少しケガもしている。敵襲でもあったのか。私は顔を引っ込めて悩む。もしも敵襲なら、声をかければ、敵と認識されかねない。私も、それなりに腕に覚えがあるから、一方的にやられる事もないだろう。刀もそこにある。助けを求めたい気持ちがあふれ出てきて、私はその女性に声をかけた。
「あのー、すみません」
「なっ、だれだ貴様!」
 予想通り警戒心バリバリの態度。私は、手をあげながら、棚の影からゆっくりと出て行く。
「敵じゃありません、攻撃の意思もありません」
 私の姿を見て女性は、少し困惑の色を見せる。寝た時のままの姿、甚平を着ている。女性の服装を見るかぎり、この場では異様な出で立ちだろう。
「……見ない顔だ……とりあえず敵でないなら、ここでおとなしくしていろ、今それどころではない」
 そう言うと、女性は持っていた折れた剣を捨て、置いてあった剣をとる。
「何があったんですか? 何かと戦ってる?」
「影の魔物が城の中に入ってきたんだ!」
 それだけ言うと、女性は部屋の外に飛び出していく。影の魔物、そう言った。聞いた事も、見た事もない物だ。ただ、人間の敵襲ではないらしい。おかげで、問答無用で斬られる事もなかった。
「気になる」
 好奇心が旺盛な方ではないけど、やっぱり気になる。パニック時の人間は、突飛な行動をとるというから、それに該当するのかもしれない。
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