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いつもの日常……え? イブ? 違うよ
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「ま……さ……」
誰かに呼びかけられている気がする。遠くの方で、声が聞こえてきた。体が揺さぶられている。ふいに遠くだと思っていた声が近づいてくる。覚醒してきたおかげで、自分が意識を失っていたという事を思い出した。そうだ、道の真ん中で突然倒れて。そういえばその時聞こえてきた声と、今聞こえていた声が、同じな気がする。
「魔王様……魔王様、起きて」
「まおう?」
よくわからない呼びかけに疑問を感じながら、目を開く。視界には女の子の顔。
「うわっ」
耐性の無い僕はつい体をよじって起き上がり、覗き込んでいた女の子から距離を取る。我ながら情けない。
「魔王様、よかった、ちゃんと生きる」
女の子は物騒な事を言う。生きてるって、死んでいた可能性も、はらんでいた言い方だ。
「だ、だれ?」
僕はまず、女の子の正体を確かめる質問を口にする。落ち着いてよく見てみると、とても現実離れした格好をしている。アニメに出てくるような悪の幹部の様な恰好。コスプレをしていると言われた方がしっくりくる恰好だった。年齢は僕と同じくらいか、少し年下。金髪碧眼の美少女。どうしても目がいってしまうデザインの胸元は、控えめな谷間が覗いている。
僕の問いかけに薄く微笑むと、女の子は僕の方にゆっくりと歩み寄ってくる。
「私はイヴリン、魔王様を召喚したのが私で、さらに言うなら魔王様の配下だよ」
そういえばさっきから魔王と呼ばれている。魔王とはあの魔王だろうか。モンスターもしくは魔族の王として描かれる魔王。いや、意味が分からない。
「僕は悠人、魔王なんて」
「悠人、あなたは魔王に違いないよ」
ゆっくりと歩み寄ってきていたイヴリンが、ついに僕の目の前までやってきた。そこで立ち止まると、座り込んでいる僕に視線を合わせる様に腰をかがめる。
「あなたの負のエネルギーは別世界にいる私でも感知できるほど強大だった、だから私達の魔王として私が召喚したの」
「しょ、召喚?!」
現代日本において、ハロウィン以外でそんな恰好が許される訳がない。いや、ハロウィンでも場所によってはアウトだ。でもそれが異世界で、それがその世界の常識ならアウトでも何でもない。
僕は召喚という単語を聞いて、初めて周りを見回した。てっきりどこかに運び込まれたと思っていた。でも違うらしい。その部屋は日本風とは言えない部屋の中。趣味の悪い禍々しいデザインの家具が並んでいる。ガイコツで作ったようなのとか、モンスターの手で作ったようなのとか。
窓の外に視線を移す。空は曇っていて、天気が悪い。よく見ると、鳥では無い何かが飛んでいるのが見える。シルエットから察すると、ドラゴンだ。やっぱりここは日本ではないらしい。飛んでいるのは日本のヘビ型の奴ではなく、西洋のドラゴンだからだ。いや、混乱している。日本でもドラゴンは飛んでいない。それで日本ではないという判断はおかしい。いや、海外でもドラゴンは飛んでいない。つまり。
「ここは異世界」
誰かに呼びかけられている気がする。遠くの方で、声が聞こえてきた。体が揺さぶられている。ふいに遠くだと思っていた声が近づいてくる。覚醒してきたおかげで、自分が意識を失っていたという事を思い出した。そうだ、道の真ん中で突然倒れて。そういえばその時聞こえてきた声と、今聞こえていた声が、同じな気がする。
「魔王様……魔王様、起きて」
「まおう?」
よくわからない呼びかけに疑問を感じながら、目を開く。視界には女の子の顔。
「うわっ」
耐性の無い僕はつい体をよじって起き上がり、覗き込んでいた女の子から距離を取る。我ながら情けない。
「魔王様、よかった、ちゃんと生きる」
女の子は物騒な事を言う。生きてるって、死んでいた可能性も、はらんでいた言い方だ。
「だ、だれ?」
僕はまず、女の子の正体を確かめる質問を口にする。落ち着いてよく見てみると、とても現実離れした格好をしている。アニメに出てくるような悪の幹部の様な恰好。コスプレをしていると言われた方がしっくりくる恰好だった。年齢は僕と同じくらいか、少し年下。金髪碧眼の美少女。どうしても目がいってしまうデザインの胸元は、控えめな谷間が覗いている。
僕の問いかけに薄く微笑むと、女の子は僕の方にゆっくりと歩み寄ってくる。
「私はイヴリン、魔王様を召喚したのが私で、さらに言うなら魔王様の配下だよ」
そういえばさっきから魔王と呼ばれている。魔王とはあの魔王だろうか。モンスターもしくは魔族の王として描かれる魔王。いや、意味が分からない。
「僕は悠人、魔王なんて」
「悠人、あなたは魔王に違いないよ」
ゆっくりと歩み寄ってきていたイヴリンが、ついに僕の目の前までやってきた。そこで立ち止まると、座り込んでいる僕に視線を合わせる様に腰をかがめる。
「あなたの負のエネルギーは別世界にいる私でも感知できるほど強大だった、だから私達の魔王として私が召喚したの」
「しょ、召喚?!」
現代日本において、ハロウィン以外でそんな恰好が許される訳がない。いや、ハロウィンでも場所によってはアウトだ。でもそれが異世界で、それがその世界の常識ならアウトでも何でもない。
僕は召喚という単語を聞いて、初めて周りを見回した。てっきりどこかに運び込まれたと思っていた。でも違うらしい。その部屋は日本風とは言えない部屋の中。趣味の悪い禍々しいデザインの家具が並んでいる。ガイコツで作ったようなのとか、モンスターの手で作ったようなのとか。
窓の外に視線を移す。空は曇っていて、天気が悪い。よく見ると、鳥では無い何かが飛んでいるのが見える。シルエットから察すると、ドラゴンだ。やっぱりここは日本ではないらしい。飛んでいるのは日本のヘビ型の奴ではなく、西洋のドラゴンだからだ。いや、混乱している。日本でもドラゴンは飛んでいない。それで日本ではないという判断はおかしい。いや、海外でもドラゴンは飛んでいない。つまり。
「ここは異世界」
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