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本編
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しおりを挟む*前話でヒーローの名前おもくそ間違えてました。混乱させてしまった方はごめんなさい。(ソル→ソテル)
****
「どうしたんだララくん。今日はまだ授業中ではないのか?」
「………あ……忘れてた……」
「サボりか。まあそんな日もあるさ」
ソテル様の家には半年ぶりに来た。公爵は相変わらずソテル様そっくりだ。
突然来ても全然怒らないところとか、むしろ慰めるようにポンポン頭を撫でてくれるところとか、すごく。
「ごめんなさい」
「それはアポなしに訪問してきたことにか?授業をサボったことにか?」
「どっちも」
こんな私に、目の前に出されたとっても美味しそうなお肉を食べる資格なんてないのではないか。
昼食を食べ忘れたのでお腹はきゅるきゅる鳴っている。
そんな私に、公爵は口を手で抑え震えながら「たくさんお食べ……」と言った。いただきます。
「美味しい」
「そうだな良かったな。毎日出すからうちに嫁いできてくれても良いんだぞ」
「婚約を解消したいです」
「今言うか」
自分の分のお肉を私の皿に移してくる女神のような公爵に本題を告げる。公爵は既に父様から聞いていたみたいで、特に驚きもせず笑った。
「フレデリクくんから聞いた。保留にしてるが。うちのが何かしたか?」
「私の友達といちゃいちゃしている……」
「イチャイチャか」
ソテル様と違って、公爵は結構笑い上戸だ。「まさかララくんからそんな言葉が出てくるとは」と爆笑している。
「参ったな。そのうち勝手に仲直りすると思って放っておいていたのだが……考え直してはくれないか?」
「借金のせいなら、何とかするよ?」
「待て待て待て、その見るからに重そうな包みはなんだ。まさか持ち歩いているのか?危ないだろう。それに借金ならとっくの昔に返済済みだぞ。完済証明書もあるが見るか?」
そう言って公爵が席を立つ。しばらくすると、一枚の紙切れを持って戻ってきた。
「ほら、ここにフレデリクくんのサインがあるだろう。まだララくんたちが生まれたばかりのころ、うちの領で災害があってな………色々な意味で結構なピンチだったのだが、フレデリクくんが助けてくれたんだ。おかげさまで今はやっと復興が進んできて、借金も返済できたわけだが」
「…………嘘」
「本当だ」
私はその紙をざっと20回は読み返した。
だって、おかしい。それならどうして婚約は続いているのだろう。
借金は全部返したのに、ソテル様はまだ損し続けるの?
「考えは変わらないかい?」
「……」
私は頷いた。公爵は何故かまた笑うと、『そうか』と一言こぼし、私の頭を撫でた。
「きっとたくさん考えたんだな。いつのまにか成長していて未来のパパは嬉しい」
「………え」
「君の意見は尊重する。………だが、一つ言わせてほしい」
優しげだった笑みが、途端に茶目っけのある悪戯っぽい笑みに変わる。
「君が一言『好き』とだけ言えば、意外な結末になるかもしれないぞ」
彼と同じアイスブルーの瞳が、まるでこちらを見透かしたように細まった。
「好きにすればいい。私はアレだけでなく、君の幸せも願っているのだから」
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