上 下
6 / 8
俺の彼氏は溺愛症候群 本編

嫌な予感

しおりを挟む
 いつものことだが、午前中は本当に忙しなく過ぎる。
 
 外来患者の子供たちは、重症患者は少ないけれど、それ故に不安がって泣き叫んだり、暴れたり、震えたり、ある意味元気な子が多い。

 注射1つにしても、スタッフ1人で相手にすることは難しい。医者と看護師数人で1人の子供の対応などに当たっていると、あっという間に時間が経ってしまう。

 今朝も予定時間を15分ほど超えて午前中の診察時間が終了した。15分で済んだのはかなりマシな方だった。

 俺は昼食を取るためにスタッフルームへと急いだ。途中の売店でパンを購入する。

 そこでふと、今朝、宗介と休憩時に落ち合う約束をしたことを思い出した。歩きながら携帯を取り出し、宗介へと電話をかける。

 手術中や入院患者に対応中であれば電話には出ないだろう。俺よりもスケジュールが不規則な宗介なのでたぶん出ないだろうな、と思っていたが。

『新太?』

 宗介は数コールで電話に出た。

「うん。今、休憩入ったけど。お前は?」
『俺も今、休憩中。ちょっと前にオペ終わって』
「タイミングよかったな。じゃあ、どうする?」
『こっち来るか? 今、当直室借りて休んでんだけど』
「……分かった、行くわ」
『後でな』

 電話を切って、小児科病棟から外科病棟へと方向転換する。

『今、当直室借りて休んでんだけど』

 嫌な予感がする。するけど。

 その予感を信じるよりも。宗介に会いたい気持ちが勝った。

 で。こうなるわな。

「んぅ……ん……」

 当直室に到着して1分も経たず。素早く部屋に鍵をかけられて、宗介に抱き締められた。そのまま、両手で顔を挟まれて、最初から激しく口内を犯された。

 嫌な予感は見事的中した。

 ここ何日もプライベートで会えていなかったから、宗介に限界が来ていることは薄々分かっていたことだった。きっと最初からこうするために、当直室を借りて待っていたのだろう。

 職権乱用じゃん、ほんと。

 そう心の中で思うが、それを口に出す余裕はない。

「ちょっ……そう……すけ……待って……ん……」

 なんとか一旦落ち着かせようと試みるが全く効果はなかった。両腕で宗介の肩を掴んで押してみるがびくともしない。

 ほんと、馬鹿力なんだよな。

 舌を執拗に絡ませてくる。くちゅくちゅと唾液の音が狭い当直室に響いた。

 スイッチが入ると、宗介はなかなか止まらない。それを痛いほど知っていた俺は諦めてキスぐらいは好きにさせることにした。

 体の力を抜いて、宗介の甘いキスに集中する。

 この男には本当に欠点がないのかと思う。キスも。セックスも。俺が今まで経験してきた中では(少ない経験だけども)断トツに上手かった。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...