なんにも知らないのは君だけ【お知らせあります】

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本編

いそいそと

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「ただいま」

 誰もいないと分かっていながらも、挨拶をして自宅へ入る。就職をきっかけに実家から出て、シンプルなワンルームマンションへと移った。実家から通うことも可能だったが、自由が欲しかったのもあるし、自分の性癖が判明した時点で将来のことも考えて自炊ができた方が困らないだろう、という思惑もあった。

 もちろん貯金などは雀の涙程度しかないので、贅沢なところには住めなかった。オートロックもエレベーターもない、築年数の経ったマンションを選んだ。ただ、ラッキーなことに数年前に改装していたらしく、古い割に見栄えはよかった。

 そんな風にして始めた一人暮らしも5年ほど経って、今では基本的なことはひとりでなんでもできるようになった。

 ローテーブルにコンビニ袋を置いて、真っ直ぐに浴室へと向かう。本当は湯船にゆっくり浸かりたいところだが、録画が見たい気持ちが勝って今夜はシャワーで軽く済ませた。冷蔵庫からビールを取り出すと、いそいそとフローリングの上に敷いたラグの上へと座る。

 リモコンを操作して目当ての録画へと辿り着いた。ボタンを押して早速見始める。先週末の試合だった。地元の神奈川ではなく、東北での試合だったため行くのは諦めた。結果を先に知ることもできるのだが、試合自体を楽しみたいので後から録画を見るときにはなるべく結果が目に入らないように気をつけている。

 試合は最初から白熱した展開となった。お互い一歩も譲らない。相手が得点を入れれば入れ返す。その中で相変わらず須藤は冷静沈着なプレーをしていた。

 須藤にばかり目が行きがちだが、他の選手たちもなかなかに実力者だ。チームとはひとりがずば抜けていても成り立たないものだなと納得する。周りのアシストも良いからこそ、須藤が良いプレーができるのだ。
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