12 / 15
本編
嫌われてんのかな?
しおりを挟む
そう言われて1ヶ月。その後数回、須藤と顔を合わせたが。慎弥に対しては話すどころか、目を合わせることもほぼなかった。慎弥が来ると、何気に距離を取って近づいてこなかったし、打ち合わせのときはコーチや他の選手に対応を任せてずっと黙っていた。
不可解なことに、そんな中、視線を感じて顔を上げると必ずと言っていいほど須藤と目が合った。どうやら自分になにかしらの興味はあるらしいが、目を合わせた途端、露骨に逸らされるのでよい意味での興味ではなさそうだった。
俺、嫌われてんのかな?
そう思ったが。嫌われようがなんだろうが仕事は仕事だ。イベントが終われば会わなくなるし、どうしても辛かったらまた次同じ企画が上がったときは、他のやつに担当してもらえばいい。
それに。不本意ながら。そんな風に冷たくされていても、プレーするときの須藤の姿にどんどん惹かれていく自分が否めなかった。惚れたというよりは、憧れ、みたいなものに近い感覚だったのかもしれない。
相手が男だということも。人気のあるスポーツ選手だということも。更にはどうやら嫌われてしまったということも。全部引っくるめて手の届く存在ではなかったので、半分諦めに近いところからのスタートだったのもあるだろう。
いつの間にか、一ファンとして須藤を追うようになった。観戦に行けるときは観戦に行き、行けないときは録画したものを見た。Bリーグは、まだ人気が安定してないため地上波で放送されることはない。そのために主に放送されている有料放送の契約までした。
試合観戦することが、仕事で忙しい毎日の楽しみとなっていた。コート上やスクリーンの向こうの須藤は、慎弥にいつも向ける無愛想な顔はしていない。真剣にボールを追う姿や、自然と見せる笑顔。そんな須藤を見て嬉しくなったり、感動したり。そう、まるでアイドルでも応援するかのような、現実味のない恋心に近い感覚。
どうせ自分は一生相手も見つからず死んでいくのかもしれないのだから。こんな小さな楽しみを持っても罪はないだろう。誰にも迷惑かけるわけでもないし。
イベントが終われば須藤と会える口実がなくなってしまうのは少し寂しい気もするけれど。
自分の下車する駅の名前がアナウンスされる。慎弥は手にしていた雑誌を閉じると鞄へと仕舞った。
帰ったらビールでも飲みながら録画しておいた試合を見よう。そう決めて電車を降り、改札を抜けると、観戦のお供となるつまみを買うために、自宅マンションのすぐ目の前にあるコンビニへと向かった。
不可解なことに、そんな中、視線を感じて顔を上げると必ずと言っていいほど須藤と目が合った。どうやら自分になにかしらの興味はあるらしいが、目を合わせた途端、露骨に逸らされるのでよい意味での興味ではなさそうだった。
俺、嫌われてんのかな?
そう思ったが。嫌われようがなんだろうが仕事は仕事だ。イベントが終われば会わなくなるし、どうしても辛かったらまた次同じ企画が上がったときは、他のやつに担当してもらえばいい。
それに。不本意ながら。そんな風に冷たくされていても、プレーするときの須藤の姿にどんどん惹かれていく自分が否めなかった。惚れたというよりは、憧れ、みたいなものに近い感覚だったのかもしれない。
相手が男だということも。人気のあるスポーツ選手だということも。更にはどうやら嫌われてしまったということも。全部引っくるめて手の届く存在ではなかったので、半分諦めに近いところからのスタートだったのもあるだろう。
いつの間にか、一ファンとして須藤を追うようになった。観戦に行けるときは観戦に行き、行けないときは録画したものを見た。Bリーグは、まだ人気が安定してないため地上波で放送されることはない。そのために主に放送されている有料放送の契約までした。
試合観戦することが、仕事で忙しい毎日の楽しみとなっていた。コート上やスクリーンの向こうの須藤は、慎弥にいつも向ける無愛想な顔はしていない。真剣にボールを追う姿や、自然と見せる笑顔。そんな須藤を見て嬉しくなったり、感動したり。そう、まるでアイドルでも応援するかのような、現実味のない恋心に近い感覚。
どうせ自分は一生相手も見つからず死んでいくのかもしれないのだから。こんな小さな楽しみを持っても罪はないだろう。誰にも迷惑かけるわけでもないし。
イベントが終われば須藤と会える口実がなくなってしまうのは少し寂しい気もするけれど。
自分の下車する駅の名前がアナウンスされる。慎弥は手にしていた雑誌を閉じると鞄へと仕舞った。
帰ったらビールでも飲みながら録画しておいた試合を見よう。そう決めて電車を降り、改札を抜けると、観戦のお供となるつまみを買うために、自宅マンションのすぐ目の前にあるコンビニへと向かった。
10
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる