なんにも知らないのは君だけ【お知らせあります】

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本編

俺はゲイなのか

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 大卒で地元の市役所に勤めて早5年。20代も後半になり、晩婚の傾向があるとはいえ、周りの友人たちも段々と家庭を持つ者が出てきた。大学を卒業してから相手のいる気配がない慎弥に、友人たちも色々と探りを入れてくるが、適当な言い訳をしてここまで流してきた。

 こうやってどこまで誤魔化していけるだろう。ふと考える。

 慎弥が、どうやら自分は同性愛者のようだと気づいたのは大学生のときだった。それまではなんの疑問もなく、みなと同じように彼女を作り、体の関係も持った。けれど、どの彼女とも長く続かなかった。付き合う内にどうしても彼女たちに対して恋愛対象ではなく友達のような感覚になってしまうのだ。

 相手を抱きたい、とか相手を想像してひとりでやる、とか、そんな欲求が生まれることもなかったし、興味もなかった。それでも相手に悪いと思い、半分義務のように関係を続けていたりした。だけど、そんな慎弥の誤魔化しに相手が気づかないわけがない。大抵、自分のことはもう好きではないのか、と詰め寄られ、返答に困って振られる。このパターンだった。

 最初、自分は他人に性的魅力を感じない、アセクシュアルなのではないかと疑った。もしそうだとしたら、それを理解してでも慎弥と一緒にいてくれる人など見つけるのは難しいだろうと思った。ならば彼女を作らずにいたらいいのだけど。自分の中でそんな自分の性癖を否定したい気持ちもあって、大学生までは結局誤魔化しながら過ごしてきてしまった。

 しかし、大学生活を送っていたあるとき。バイト先の居酒屋の店長に告白というか、迫られて初めて『男』を意識した。意識した途端、それがとてもしっくりときた。そういえば。思い起こせば小学校のころから、彼女たちといるより男友達といる方が楽しかったし、着替えのときになぜか男友達の裸を意識したり、接触されるとなんとなく高揚したりしていた気がする。

 そうか。俺はゲイなのか。

 それを確かめたくて、その店長と関係を持った。驚いた。付き合ってきた彼女たちとでは全く感じられなかった快感がそこにはあった。自分が自然に『受け』に回っていたことにも驚いた。男の手で触れられることが、ごく当たり前のことに思えた。
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