幽霊と俺

文字の大きさ
上 下
8 / 76
第二話

幽霊友達、亜紀

しおりを挟む
 そんな樹だけでも面倒だというのに。同居が始まって1ヶ月ぐらいが過ぎたころ。

『初めまして~』

 なぜかもう1人。女の幽霊が現れるようになった。

『……誰?』
『あ、私、亜紀っていうの。よろしくね、圭介くん』
『…………』

 説明を求めその亜紀と名乗った幽霊の隣で雑誌(圭介の)を読んでいる樹を睨むように見た。その視線に気づいた樹がこちらを見返す。

『何?』
『説明しろ』
『え? ……ああ、亜紀のこと? こいつは、俺のまあ、友達? みたいな?』
『まあ、体もお友達だったけどねぇ』

 きゃはは、と嬉しそうに笑う亜紀を無視しつつ、圭介は更に樹を問い詰めた。

『友達だかなんだか知らないけど、なんで、ここに来るわけ? この人は別にここに憑いてるわけじゃないだろ?』
『ある意味、憑いてたけどな、前まで』
『え?』
『亜紀は、俺と一緒に死んでんの。ストーカー女に刺されて、な?』
『うん、そう。ほんといい迷惑だよね~。私はまだまだ人生楽しもうと思ってたのにさぁ。樹の女事情に巻き込まれて~』

 その会話で、樹が死に至った経緯を思い出した。確か、セフレだと思っていた女が本気になってしまい、別のセフレ女友達と帰宅した際、2人とも包丁でめった刺しにされて殺されたのだった。

『じゃあ、樹と一緒に死んだっていう……セフレの人?』
『そうなの』
『でも……地縛霊じゃないの?』
『違うよ。私はどっちかっていうと浮遊霊に近いかな。最初は樹とここにいたんだけど、私の場合、別にここに未練があるわけでもないし、どっちかって言ったら別のところに未練があるから移動してみたらできたってわけ』
『……そんな、このホスト気に入らないから別のホストにします、みたいな感じで変えられるもんなの? 憑く場所って』
『できない時もあるけど、私はできた。というか、たぶん、私はこの場所にもともと憑いてなかったんだろうね。だから浮遊霊の類いになると思うんだけどさ。樹は地縛霊だもんね。ここから動けないし』
『動こうと思えばできるけど。面倒だから動かないだけ』

 樹が雑誌に目を落としながら答えた。

 圭介には結構な霊感が昔からあったため、そういうオカルト系について知識を得ようとある程度は調べたことがある。地縛霊は、死んだ場所そのものに縛り付けられてしまうので、そこから離れることはほぼできないはずだった。一方、浮遊霊は自由に移動ではできるものの、特定の居場所などは存在しないため当てもなくさまようことになる。

『移動って、お前できるの?』
『できるよ。人や物に憑けば』
『じゃあ、ここから出ていけばいいじゃん。もっと生気ばんばん取らせてくれそうな奴いるだろ?』
『取り憑くのも力が要るんだよ。それに、ここで待ってりゃ、向こうから来るし』
『えり好みするけどね』
『亜紀、うるさい』
『まあ、そんなわけで、私は暇になったら樹のとこに遊びに来てるだけだから気にしないでね』

 いや、ここ、俺の部屋なんですけど。というセリフは言ってもどうせ無駄なので、心の中だけで呟いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...