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第二話
幽霊友達、亜紀
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そんな樹だけでも面倒だというのに。同居が始まって1ヶ月ぐらいが過ぎたころ。
『初めまして~』
なぜかもう1人。女の幽霊が現れるようになった。
『……誰?』
『あ、私、亜紀っていうの。よろしくね、圭介くん』
『…………』
説明を求めその亜紀と名乗った幽霊の隣で雑誌(圭介の)を読んでいる樹を睨むように見た。その視線に気づいた樹がこちらを見返す。
『何?』
『説明しろ』
『え? ……ああ、亜紀のこと? こいつは、俺のまあ、友達? みたいな?』
『まあ、体もお友達だったけどねぇ』
きゃはは、と嬉しそうに笑う亜紀を無視しつつ、圭介は更に樹を問い詰めた。
『友達だかなんだか知らないけど、なんで、ここに来るわけ? この人は別にここに憑いてるわけじゃないだろ?』
『ある意味、憑いてたけどな、前まで』
『え?』
『亜紀は、俺と一緒に死んでんの。ストーカー女に刺されて、な?』
『うん、そう。ほんといい迷惑だよね~。私はまだまだ人生楽しもうと思ってたのにさぁ。樹の女事情に巻き込まれて~』
その会話で、樹が死に至った経緯を思い出した。確か、セフレだと思っていた女が本気になってしまい、別のセフレ女友達と帰宅した際、2人とも包丁でめった刺しにされて殺されたのだった。
『じゃあ、樹と一緒に死んだっていう……セフレの人?』
『そうなの』
『でも……地縛霊じゃないの?』
『違うよ。私はどっちかっていうと浮遊霊に近いかな。最初は樹とここにいたんだけど、私の場合、別にここに未練があるわけでもないし、どっちかって言ったら別のところに未練があるから移動してみたらできたってわけ』
『……そんな、このホスト気に入らないから別のホストにします、みたいな感じで変えられるもんなの? 憑く場所って』
『できない時もあるけど、私はできた。というか、たぶん、私はこの場所にもともと憑いてなかったんだろうね。だから浮遊霊の類いになると思うんだけどさ。樹は地縛霊だもんね。ここから動けないし』
『動こうと思えばできるけど。面倒だから動かないだけ』
樹が雑誌に目を落としながら答えた。
圭介には結構な霊感が昔からあったため、そういうオカルト系について知識を得ようとある程度は調べたことがある。地縛霊は、死んだ場所そのものに縛り付けられてしまうので、そこから離れることはほぼできないはずだった。一方、浮遊霊は自由に移動ではできるものの、特定の居場所などは存在しないため当てもなくさまようことになる。
『移動って、お前できるの?』
『できるよ。人や物に憑けば』
『じゃあ、ここから出ていけばいいじゃん。もっと生気ばんばん取らせてくれそうな奴いるだろ?』
『取り憑くのも力が要るんだよ。それに、ここで待ってりゃ、向こうから来るし』
『えり好みするけどね』
『亜紀、うるさい』
『まあ、そんなわけで、私は暇になったら樹のとこに遊びに来てるだけだから気にしないでね』
いや、ここ、俺の部屋なんですけど。というセリフは言ってもどうせ無駄なので、心の中だけで呟いた。
『初めまして~』
なぜかもう1人。女の幽霊が現れるようになった。
『……誰?』
『あ、私、亜紀っていうの。よろしくね、圭介くん』
『…………』
説明を求めその亜紀と名乗った幽霊の隣で雑誌(圭介の)を読んでいる樹を睨むように見た。その視線に気づいた樹がこちらを見返す。
『何?』
『説明しろ』
『え? ……ああ、亜紀のこと? こいつは、俺のまあ、友達? みたいな?』
『まあ、体もお友達だったけどねぇ』
きゃはは、と嬉しそうに笑う亜紀を無視しつつ、圭介は更に樹を問い詰めた。
『友達だかなんだか知らないけど、なんで、ここに来るわけ? この人は別にここに憑いてるわけじゃないだろ?』
『ある意味、憑いてたけどな、前まで』
『え?』
『亜紀は、俺と一緒に死んでんの。ストーカー女に刺されて、な?』
『うん、そう。ほんといい迷惑だよね~。私はまだまだ人生楽しもうと思ってたのにさぁ。樹の女事情に巻き込まれて~』
その会話で、樹が死に至った経緯を思い出した。確か、セフレだと思っていた女が本気になってしまい、別のセフレ女友達と帰宅した際、2人とも包丁でめった刺しにされて殺されたのだった。
『じゃあ、樹と一緒に死んだっていう……セフレの人?』
『そうなの』
『でも……地縛霊じゃないの?』
『違うよ。私はどっちかっていうと浮遊霊に近いかな。最初は樹とここにいたんだけど、私の場合、別にここに未練があるわけでもないし、どっちかって言ったら別のところに未練があるから移動してみたらできたってわけ』
『……そんな、このホスト気に入らないから別のホストにします、みたいな感じで変えられるもんなの? 憑く場所って』
『できない時もあるけど、私はできた。というか、たぶん、私はこの場所にもともと憑いてなかったんだろうね。だから浮遊霊の類いになると思うんだけどさ。樹は地縛霊だもんね。ここから動けないし』
『動こうと思えばできるけど。面倒だから動かないだけ』
樹が雑誌に目を落としながら答えた。
圭介には結構な霊感が昔からあったため、そういうオカルト系について知識を得ようとある程度は調べたことがある。地縛霊は、死んだ場所そのものに縛り付けられてしまうので、そこから離れることはほぼできないはずだった。一方、浮遊霊は自由に移動ではできるものの、特定の居場所などは存在しないため当てもなくさまようことになる。
『移動って、お前できるの?』
『できるよ。人や物に憑けば』
『じゃあ、ここから出ていけばいいじゃん。もっと生気ばんばん取らせてくれそうな奴いるだろ?』
『取り憑くのも力が要るんだよ。それに、ここで待ってりゃ、向こうから来るし』
『えり好みするけどね』
『亜紀、うるさい』
『まあ、そんなわけで、私は暇になったら樹のとこに遊びに来てるだけだから気にしないでね』
いや、ここ、俺の部屋なんですけど。というセリフは言ってもどうせ無駄なので、心の中だけで呟いた。
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