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 昼までの仕事を終わらせ、急いで自宅へと戻ってきた。ここ数日、仕事が立て込んで他のことが一切できなかった。晃良はスーツから普段着へ着替え終えると、小さめのスーツケースを引っ張り出してきて、さっさと荷造りを始めた。

 ふと、デスク上の写真立てが目に入った。そこには、晃良が川に落ちたとき、水の中でなんとかつかんだあの写真が入れられている。気を失ってもちゃんと握り締めていたらしく無事だった。晃良が病院で意識を失っていた間に有栖が色々と尽力してくれ、見事に復元させてくれた。綺麗きれいに元通りとなった写真をじっと見ていると。

「あ、晃良くん、おかえり」

 尚人が自室から出てきて、晃良の部屋の前で立ち止まった。

「ただいま」
「あれ、まだ荷造りしてなかったの? 間に合う?」
「間に合わせる」
「飛行機何時?」
「夜。8時ぐらい」
「じゃあ、大丈夫そうだね」

 尚人が晃良の部屋にあるデジタル時計で時刻を確認しながら言った。

「晃良くん、荷物あんまないでしょ?」
「うん。着替えと日用品だけだから。すぐ済む」
「送ってこうか?」
「いいよ。タクシーで行く。尚人だってせっかくの休みだろ? ジュンだって来るし」
「うん。だけど、来るの明日の朝だし。今日は暇だから」
「いいって。ジュン来たらゆっくりできるかわからないだろうし、今日は1日休んどけよ」
「……うん、わかった」

 尚人と会話をしつつも手は動かし続ける。そんな様子を尚人がじっと見ていた。

「ねえ、晃良くん」
「ん?」
「……本当に良かったの?」
「何が?」
「黒崎くんとこに行かなくて」
「……今から行くじゃん」
「そういう意味で聞いてないのわかってるでしょ」
「もういいって。この話、何回したんだよ。決めたことだから。黒崎も一応納得してくれたし」
「だけど……俺たちのためだったら……」
「尚人」

 さらに何か言いかける尚人を制した。荷造りの手を止めて尚人を見る。

「今は、これが一番いいと思ってんだよ。そりゃ、離れてて寂しいときもあるけどさ。俺は日本の生活が性に合ってるし、仕事もまだまだこっちでやりたいと思ってるし。俺、さすがにずっと英語で仕事するのはしんどいしさ。だから、そのうち体が思うように動かないようになって、もういいかと思ったら、引退してあっち行くから」
「……黒崎くん、本当に納得したの?」
「かなりねたけどな。お互い譲歩はしたし」
「譲歩って、半年は一緒にいるってやつ?」
「ん。半年一緒にいたら半同棲どうせいだろ」
「まあ……」
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