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This is the moment ⑤

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「あれ? ジュンは?」

 リビングへ入ると、先ほどの視線の主だったであろう涼が1人ぽつんとダイニングテーブルに座って朝食を取っていた。

「尚人起こしにいった」
「そうか……」

 黒崎を振り返って尋ねる。

「朝食は? 食べた?」
「まだ食べてない」
「食べるか? 尚人じゃないから、大したもの作れないけど」
「食べる」
「ジュンも食べるかな?」

 尚人も起きるなら、たまには尚人の分も作ってやろうかと思いつく。2人に食べるかどうか聞いてこようと、尚人の部屋へと向かった。いつもするように挨拶程度に軽くノックをして、間髪入れずにドアを開けた。

「尚人、ジュン。朝飯作るけど食べ……」

 足を踏み入れた途端、目の前に入ってきた光景に思わず言葉を止めた。ベッドの上で、頭ぼさぼさの尚人の上に有栖がまたがっていた。いや、服はまだ着ていたけれども。どう見ても、これからちょっとイチャイチャ、もしくは今、イチャイチャしていたような空気が漂っていた。2人はこちらを見ると少し驚いた顔をしたが、さほど慌てた様子も見せなかった。

「おはよ、晃良くん」

 尚人がそのままの体勢で笑って話しかけてきた。

「……おはよう」

 有栖は、よいしょ、と尚人の上からどいてベッドから降りた。ニコリと笑ってこちらを見る。その2人を交互に見て、今までずっと機会がなくて聞けなかった疑問を口にした。

「2人って……そういう関係?」
「うん、そう」

 あっさりと有栖が答えた。

「やっぱり……」

 有栖に続いて、尚人が起き上がりながら続けた。

「ていうか、ずっと言おうと思ってたよ。だけど、晃良くんと黒崎くんがちょっとごたごたしてるみたいだったから、有栖くんと相談して2人が落ち着くまで黙っとこうってことになってさ」
「いや、バレバレだったけど」
「まあ、バレたらバレたでいいかとも思ってたから。黙ってたけど、隠してたわけじゃないし。やましいことしてるわけでもないし」

 そう言って、有栖と微笑み合う尚人を見て、晃良も自然と笑顔になる。尚人のこんな優しい笑顔は見たことがなかった。

「この前、やっと晃良くんたち、まとまったみたいだったし。今度、みんながそろったらちゃんと報告しようって言ってたんだけど」
「そうか」
「うん」
「なあ。ついでに野暮なこと聞いていい?」
「なに?」
「……ふたりのその関係は……もちろん、中身はあんだよな?」
「……中身? ……ああ、うん、もちろん。セフレとはみんな縁切ってるよ」
「そうか……」

 それなら良かった。と晃良は心の中で思う。今までどこか他人との距離を詰めることに冷めていた尚人が、セフレではなく心で向き合える相手を見つけてきちんと関係を築いていたことに、晃良は親心にも近いほっとしたような、うれしいようなそんな感情を抱いていた。
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