上 下
200 / 239

This is the moment ④

しおりを挟む
 翌日早朝。遠慮のない勢いでインターホンが連打された。起きたばかりで不機嫌そうな涼が、晃良をちらっと見る。その視線を受け、晃良はダイニングテーブルから立ち上がると応対へと急いだ。

 尚人も今日は1日休みなので、まだ起きてきてはいなかった。晃良はモニターで相手を確認すると、オートロックを解除した。数分後、玄関のインターホンが鳴らされる。

「おはよう、晃良くん」

 玄関の戸を開けると、まず飛び込んできたのは有栖の笑顔だった。

「おはよう」
「朝早くごめんね。だけど、フライトが早いのしかなくて」
「いいよ。もう慣れた。上がって」
「うん、お邪魔しまーす」

 そう言って元気よく入ってきた有栖の後ろに。

「……いらっしゃい」

 約1ヶ月振りに見る、黒崎の姿があった。優しいというよりは熱のこもった視線でじっと顔を見られる。

「どうした?」
「……やっと会えた」
「は? え? おわっ」

 隙のない動きで引き寄せられ、抱き締められる。

「黒崎?」
「もう~凄ぇ長かったわ~。アキちゃんビデオだけじゃ耐えるの無理~」
「アキちゃんビデオ?」
「なんでもない。それより、会いたかった、アキちゃん」

 さらに腕に力を込められる。

「……俺も、会いたかった」

 そうささやいて、黒崎の背中に腕を回して抱き締め返した。

 しばらくの間、ずっとそうしていた。ふと、リビングから誰かの視線を感じてはっと我に返る。

「とりあえず上がって」
「え~、もうちょっとこうしてたいんだけど」
「そんなの、後からいくらでもできるだろ」
「……いくらでもなんでも?」

 見上げると、悦の入ったニヤけた顔とぶつかった。

「……相変わらず、変態さは変わんねぇな」
「アキちゃんにはいつも全力で素の自分を見せたいと思ってる」
「なんだそれ」

 わけわかんねー、と言いながらするりと黒崎の腕から抜け、さっさと先に歩き出した。え~、もうアキちゃん、そういうとこは冷たいよなぁ、相変わらず。とブツブツ言いながら黒崎も付いてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

Childhood friend lover 【著 CHIYONE】

BL
ハイジと翔は幼稚園から幼馴染で、きっとこれからもただの幼馴染のはずだった。 大嫌いなオレの幼馴染は言う。 「ボクは翔が好きだよ」 その意味が分からないまま、いつの間にかオレ達は大人になっていた。 この作品は「総務の袴田君が実は肉食だった話聞く?!」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/210493331/280221109)に出てくる総務部の二人のパロディになっていますが、該当作品は読まなくても分かるようになっています。 表紙、挿し絵は真中さん(Pixiv ID 39888961)から頂きました。 R18には※がつきます。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

猫をかぶるにも程がある

如月自由
BL
陽キャ大学生の橘千冬には悩みがある。声フェチを拗らせすぎて、女性向けシチュエーションボイスでしか抜けなくなってしまったという悩みが。 千冬はある日、いい声を持つ陰キャ大学生・綱島一樹と知り合い、一夜の過ちをきっかけに付き合い始めることになる。自分が男を好きになれるのか。そう訝っていた千冬だったが、大好きオーラ全開の一樹にほだされ、気付かぬうちにゆっくり心惹かれていく。 しかし、弱気で優しい男に見えた一樹には、実はとんでもない二面性があって――!? ノンケの陽キャ大学生がバリタチの陰キャ大学生に美味しく頂かれて溺愛される話。または、暗い過去を持つメンヘラクズ男が圧倒的光属性の好青年に救われるまでの話。 ムーンライトノベルズでも公開しております。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...