変態ストーカーの専属BGにはなりません!

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This is the moment ③

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 あの7日間は本当に濃かった。ホテルで初めて結ばれた後、翌日一緒にメリーランド州にある黒崎のアパートまで移動した。有栖と住んでいるという広々とした洒脱しゃだつなアパート。有栖は入れ違いに日本へ行ってしまったので、実質、朝も夜も完全に2人きりだった。

 最初の3日間はとにかく抱き合っていた。朝も夜も関係なく。まるで、抑えが効かなくなった動物のように(特に黒崎が)。食事や風呂以外はベッドでほとんどを過ごし、原始人並みに裸だった。

『ちょっと、もういい加減、落ち着くか』

 さすがに体の限界を感じた晃良は4日目に黒崎に訴えた。

『え~、だって、アキちゃんとまたいつエッチできるかわかんないじゃん』
『だからって、せっかくの休暇にずっとヤッてるだけっておかしいだろ。俺、アメリカにいる意味なくない?』
『アキちゃんが言ったじゃん。休暇中、アキちゃんだけ見てくれって』
『言ったけど。それは別に肉体的にってことじゃなくて。「アキ」のことを一時的に忘れて俺に集中してくれって言う意味だったんだけど』
『めちゃくちゃ集中してるよ』
『そうかもしれねぇけど、別にヤってなくても集中できるだろ』
『ヤってるときの方が集中できる』
『とにかく! 残りの日は観光とかもっと休暇らしいことするぞ』
『え~』
『他のことしないなら、もうヤらない』
『アキちゃん、それはなくない?』
『ある。大いにある。俺の体を労ってくれ』
『え~、もう、わかった~』

 そんな会話の末、渋々と合意した黒崎と、残りの4日間は現代人並みの毎日を過ごすことができた。観光スポットに案内してもらったり、評判のレストランなどに連れていってもらったり、研究所をできる限りで見せてもらったりした。黒崎のアメリカでの生活を垣間見られたことは晃良にとってとても新鮮で、黒崎のことをもっと理解できた気がしてうれしかった。

「晃良くん?」

 間近で名前を呼ばれて我に返った。涼が怪訝けげんそうな顔をしてこちらを見ていた。

「どうしたの?」
「……ああ、ごめん。ちょっと、ぼうっとしてた」
「……黒崎くんとの7日間の情事を思い出してた?」
「だから。その言い方止めろって言ってるだろ」
「でもさぁ」

 そう言って、涼を挟んで向こう側に座る尚人が、美味しそうに煎餅をかじりながら笑顔を向けた。

「良かったね、晃良くん」

 涼も口角を上げて晃良を見る。2人の優しい視線に妙に恥ずかしくなる。

「まあ……そうだな」
「あっさり勝てたしね、過去の晃良くんに」
「勝てた気はしないけどな」
「だけど、結局は黒崎くんが気づいたんだから良かったじゃん。過去より今の方が大事なんだって」
「まあ……」
「晴れて正式に付き合い出したんだし。もう記憶戻んなくてもいいよな?」
「いや、それは別問題だと思ってる」
「そうなの?」
「ん。取り戻せるものなら取り戻したいと思ってる。黒崎のためというか、自分のために」
「どういうこと?」
「昔の記憶は、黒崎と共有した大事な記憶だろ。だから、思い出せたらうれしいなと思う」
「……そう」

 さてと、と晃良は立ち上がった。

「涼は明日仕事だろ? もうそろそろ寝た方がいいんじゃねぇの?」
「晃良くんの休みって明日だけだった?」
「いや、3日間ぐらい取れた」
「いいな~。俺も休みたい」
「涼は先週休んだばかりだろ、1週間」

 そしたら歯磨きして寝るわ。そう言って2人に挨拶してからリビングを出た。明日、黒崎がアメリカからやってくる。1ヶ月振りに会える。あの7日間を過ごしてから。どうしようもなく、黒崎に会いたい気持ちが止まらなかった。

 会いたくて。寂しくて。こんな気持ちにさせられたのは初めてだった。

 洗面所の前に立つ。黒崎と会える喜びに心が躍るような感覚を自覚しながら、晃良は歯ブラシへと手を伸ばした。
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