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No matter what ㉔

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「こいつらも連れてけって言ったのに」

 黒崎はそうブツブツ言いながらしゃがみこむと、ポンポンと倒れている男たちの1人の肩をたたいた。

「ちょっと。起きてくれる?」

 ん~っとうめき声を上げて肩をたたかれた男が目を覚ました。状況がわかるとはっとおびたような顔をする。

「なあ、他の2人も連れて出ていってくれる? アキちゃんと2人きりで話したいんだけど」

 そう黒崎が言うと、男は慌てた様子で残りの2人をたたき起こし、3人一緒に転がるように部屋を出ていった。

 急に部屋が静かになる。

「なんか……ベタな退場だったな」

 覚えてろよっ、とか言ったらベタさ完璧だったけど。と扉の方を向いて1人話していた黒崎が振り返った。目が合って、晃良の中に緊張が生まれる。

「アキちゃん、大丈夫だった?」

 そう言って、晃良に近づこうとする黒崎に思わず後ずさりをする。黒崎のクリスとの会話が頭の中で繰り返された。黒崎がふと足を止めた。

「アキちゃん?」
「……聞いてたんだな」
「…………」
「あいつとの会話。最初から」
「……そうだね」

 晃良は内心ショックを隠しきれなかった。すぐに駆け込んで晃良を助けようとしてくれなかったことではなくて。自分とクリスとの会話の中で露見してしまった、「アキ」に対する感情。それを聞かれたことがショックだったのだ。こんなに早く、こんなタイミングでうっかりなんて知られたくなかった。

「ごめん。だけど……最後まで聞きたかったから」
「…………」

 距離を保ったまま見つめ合う。

 知られてしまった以上。もう誤魔化したって意味がない。今が、このことに真っ正面から向き合う時だと、運命の神だかなんだかが言っているのかもしれない。だってほら。黒崎はそのことを話そうとしている。晃良の言葉の意味を確かめようとしている。きっと晃良を逃がしてはくれない。そして。真っ直ぐなその目で、黒崎の胸の内を晃良に正直に伝えようとしている。そう覚悟を決めている。晃良にとってそれが望ましくないことであっても。
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