変態ストーカーの専属BGにはなりません!

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No matter what ⑩

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 4月のカリフォルニアは、日本に比べて昼夜の温度差が少ないせいか温かく感じた。ロサンゼルス空港から宿泊予定のホテルがある市内までタクシーで移動する。

 警護は明日、クライアントがホテルを出発してからパーティー終了後ホテルに戻るまでの契約となっていた。

 時差ボケにならぬよう、今日の内にうまく体調を調整しなければならない。

 ふうっと、タクシーの後部座席にもたれ掛かる。ゆっくりと目を閉じた。長距離の飛行機移動は疲れる。黒崎はいつもこれくらいの距離を毎月移動して晃良に会いにきてくれていたのかと思うと、うれしさの反面、申し訳なさも感じる。

 明後日の夜には再会できるはずの黒崎のことをぼんやりと考える。昨晩、仕事で渡米する旨を電話で伝えた時の、黒崎のはしゃぎようは半端なかった。アキちゃんがわざわざ自分から会いに来てくれるの?? と「仕事で」という部分は全く無視され、空港に迎えに行くだの、ラスベガスに連れていくだの、勝手にどんどん話を進めていった。

 半分キレる形で晃良が黒崎を止め、仕事で行くついでにそちらに寄ることを今一度説明すると、ついでなんだ……とねられた。しかし、晃良が1週間ほど休暇を取ったと伝えると、意地でもその休暇に合わせると張り切り電話を一方的に切られた。

 その1時間後、少し先に取るはずだった休みを無理やり前倒しして1週間休みを取ったと伝えてきた時には、晃良も内心うれしかった。

『ごめんね、アキちゃん。そっちに迎えに行きたかったんだけど、ちょうど俺も別のパーティーに出なきゃいけなくて、その日。で、次の日ミーティングだし』

 どうやら晃良が警護をする予定の日、黒崎も何か重要なパーティーがあるようだった。迎えにきてもらえるとは期待してなかったので、あっさりと答える。

『そんなの、いいって。どうせ俺も警護で遅くなるだろうし。次の日自力でそっち行くし』
『だけど、大丈夫? アキちゃん、可愛いから誘拐とかされそうで心配だわ~』
『お前、俺、何歳だと思ってんだよ。28だぞ。誘拐されるわけないだろうが』
『そんなの、わかんないじゃん。とにかく気をつけて。なんかあったら、俺を呼んで』
『どうやって呼ぶんだよ』
『心で叫んで』
『はあ……』

 なんだそれ、と思ったその会話を思い出して思わず笑った。タクシーの運転手が怪訝けげんな顔でバックミラー越しに晃良を見た。

 俺もちょっと、浮かれてるかもな。

 まずは仕事をちゃんとこなさなければ。晃良は緩みそうになる気持ちをぐっと引き締めて、警護に向けて頭を切り替えた。
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