132 / 239
Out of control ⑫
しおりを挟む
不機嫌極まりない顔で黒埼を無視しながら、併設しているショッピングセンターをやみくもに歩いた。のんびりと買い物をする客の間を、競歩でもしているかのようなスピードで進む。黒崎はそんな晃良に何も言わずに、ただ後ろを付いてきた。
腹が立ち過ぎて精神力を使い過ぎたせいか、空腹が襲ってきた。そういえば、朝からポップコーン以外、何も食べてない。このまま最悪な雰囲気のままデートを終わらすのも大人気ない気がしてきた。いや、それくらいの仕打ちは受けている気はするけども。でも。またいつデートできるかもわからないのだし。
「おい。腹減った。飯にするぞ」
そっけなくなってしまったが、黒崎を許す意味も込めて話しかけた。
「うん。もうとっくに昼、過ぎてるしね」
黒崎が笑顔でそう答えた。時計を確認するとすでに午後2時近かった。こんなに昼を過ぎているとは思わなかった。
きっと黒埼だって腹が減っていたはずだ。なのに、何にも言わずに不機嫌な晃良にずっと付き合ってくれていた。晃良に罪悪感が生まれる。
「……ごめん」
「何が?」
「付き合わせて」
「アキちゃんが謝ることなんてないじゃん。俺は、アキちゃんといられたらそれでいいし」
「…………」
「とりあえず、飯行こ」
ちょうどショッピングセンターのフードコートが近くにあったので、そこで昼食を済ませた。食事をする内に、気まずさが消え、いつもの2人の雰囲気に戻っていった。黒崎がさりげなく、そうなるように振る舞ってくれたのがわかった。
この後どうしようかと相談したところ、せっかくの良い天気だったので、映画は止めて適当にドライブでもしようかということになった。トレイを返却口に戻すと、駐車場へと向かう。
駐車場の近くまできて、トイレに行きたくなった。黒埼に先に車まで待ってもらうように伝えた。
黒埼と別れて振り返った瞬間、通行人とぶつかりそうになって避ける。2人組の男たちだった。
ん?
僅かだが。違和感を覚えて、足を止めた。何だろう。この平和なショッピングセンターに似つかわしくない暗めのスーツを着た、人相の悪い男たちだった。職業柄、不審者の匂いを嗅ぎ取るのは得意だった。
もしかしたら暴力団関係の人間かもしれない。しかし、ここを出て駐車場へ向かうようだし、殺気立った気配も感じられなかった。ただ単にこのショッピングセンターに寄っただけなのかもしれない。暴力団組員だって買い物ぐらいはするだろう。気にしすぎか、と思い直してトイレへと歩き出した。
トイレを目指す途中。1軒だけそこそこ賑わっている店があった。なんだろうと覗いてみる。ああ、そういうことか。納得してそのまま店を素通りしようとしたが。ふとそこで思い留まる。
「…………」
これを実行するのはかなり勇気の要ることだったが。少しは「お返し」になるかもしれない。その場に立ち止まって少しの間迷っていたが、晃良は意を決して店へと再び引き返した。
腹が立ち過ぎて精神力を使い過ぎたせいか、空腹が襲ってきた。そういえば、朝からポップコーン以外、何も食べてない。このまま最悪な雰囲気のままデートを終わらすのも大人気ない気がしてきた。いや、それくらいの仕打ちは受けている気はするけども。でも。またいつデートできるかもわからないのだし。
「おい。腹減った。飯にするぞ」
そっけなくなってしまったが、黒崎を許す意味も込めて話しかけた。
「うん。もうとっくに昼、過ぎてるしね」
黒崎が笑顔でそう答えた。時計を確認するとすでに午後2時近かった。こんなに昼を過ぎているとは思わなかった。
きっと黒埼だって腹が減っていたはずだ。なのに、何にも言わずに不機嫌な晃良にずっと付き合ってくれていた。晃良に罪悪感が生まれる。
「……ごめん」
「何が?」
「付き合わせて」
「アキちゃんが謝ることなんてないじゃん。俺は、アキちゃんといられたらそれでいいし」
「…………」
「とりあえず、飯行こ」
ちょうどショッピングセンターのフードコートが近くにあったので、そこで昼食を済ませた。食事をする内に、気まずさが消え、いつもの2人の雰囲気に戻っていった。黒崎がさりげなく、そうなるように振る舞ってくれたのがわかった。
この後どうしようかと相談したところ、せっかくの良い天気だったので、映画は止めて適当にドライブでもしようかということになった。トレイを返却口に戻すと、駐車場へと向かう。
駐車場の近くまできて、トイレに行きたくなった。黒埼に先に車まで待ってもらうように伝えた。
黒埼と別れて振り返った瞬間、通行人とぶつかりそうになって避ける。2人組の男たちだった。
ん?
僅かだが。違和感を覚えて、足を止めた。何だろう。この平和なショッピングセンターに似つかわしくない暗めのスーツを着た、人相の悪い男たちだった。職業柄、不審者の匂いを嗅ぎ取るのは得意だった。
もしかしたら暴力団関係の人間かもしれない。しかし、ここを出て駐車場へ向かうようだし、殺気立った気配も感じられなかった。ただ単にこのショッピングセンターに寄っただけなのかもしれない。暴力団組員だって買い物ぐらいはするだろう。気にしすぎか、と思い直してトイレへと歩き出した。
トイレを目指す途中。1軒だけそこそこ賑わっている店があった。なんだろうと覗いてみる。ああ、そういうことか。納得してそのまま店を素通りしようとしたが。ふとそこで思い留まる。
「…………」
これを実行するのはかなり勇気の要ることだったが。少しは「お返し」になるかもしれない。その場に立ち止まって少しの間迷っていたが、晃良は意を決して店へと再び引き返した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
91
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる