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Out of control ⑫

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 不機嫌極まりない顔で黒埼を無視しながら、併設しているショッピングセンターをやみくもに歩いた。のんびりと買い物をする客の間を、競歩でもしているかのようなスピードで進む。黒崎はそんな晃良に何も言わずに、ただ後ろを付いてきた。
 
 腹が立ち過ぎて精神力を使い過ぎたせいか、空腹が襲ってきた。そういえば、朝からポップコーン以外、何も食べてない。このまま最悪な雰囲気のままデートを終わらすのも大人気ない気がしてきた。いや、それくらいの仕打ちは受けている気はするけども。でも。またいつデートできるかもわからないのだし。

「おい。腹減った。飯にするぞ」

 そっけなくなってしまったが、黒崎を許す意味も込めて話しかけた。

「うん。もうとっくに昼、過ぎてるしね」

 黒崎が笑顔でそう答えた。時計を確認するとすでに午後2時近かった。こんなに昼を過ぎているとは思わなかった。

 きっと黒埼だって腹が減っていたはずだ。なのに、何にも言わずに不機嫌な晃良にずっと付き合ってくれていた。晃良に罪悪感が生まれる。

「……ごめん」
「何が?」
「付き合わせて」
「アキちゃんが謝ることなんてないじゃん。俺は、アキちゃんといられたらそれでいいし」
「…………」
「とりあえず、飯行こ」

 ちょうどショッピングセンターのフードコートが近くにあったので、そこで昼食を済ませた。食事をする内に、気まずさが消え、いつもの2人の雰囲気に戻っていった。黒崎がさりげなく、そうなるように振る舞ってくれたのがわかった。

 この後どうしようかと相談したところ、せっかくの良い天気だったので、映画は止めて適当にドライブでもしようかということになった。トレイを返却口に戻すと、駐車場へと向かう。

 駐車場の近くまできて、トイレに行きたくなった。黒埼に先に車まで待ってもらうように伝えた。

 黒埼と別れて振り返った瞬間、通行人とぶつかりそうになって避ける。2人組の男たちだった。

 ん?

 僅かだが。違和感を覚えて、足を止めた。何だろう。この平和なショッピングセンターに似つかわしくない暗めのスーツを着た、人相の悪い男たちだった。職業柄、不審者の匂いを嗅ぎ取るのは得意だった。

 もしかしたら暴力団関係の人間かもしれない。しかし、ここを出て駐車場へ向かうようだし、殺気立った気配も感じられなかった。ただ単にこのショッピングセンターに寄っただけなのかもしれない。暴力団組員だって買い物ぐらいはするだろう。気にしすぎか、と思い直してトイレへと歩き出した。

 トイレを目指す途中。1軒だけそこそこにぎわっている店があった。なんだろうとのぞいてみる。ああ、そういうことか。納得してそのまま店を素通りしようとしたが。ふとそこで思い留まる。

「…………」

 これを実行するのはかなり勇気の要ることだったが。少しは「お返し」になるかもしれない。その場に立ち止まって少しの間迷っていたが、晃良は意を決して店へと再び引き返した。
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