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Just the way it is ㉓

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 その時。こんこん、とドアがノックされた。応答すると、遠慮気味にゆっくりとドアが開かれて、ぴょこんと有栖の顔がのぞいた。

「ごめんね、お邪魔だった?」
「うん、凄ぇ邪魔だった。今は俺とアキちゃんのラブラブタイムだから」
「あ、そうだった? でも、今日はさすがにセックスとかできないでしょ? アッキー、病気だし」
「……はっきり言ったな、ジュン」
「アッキー、具合どう?」
「まだちょっとだるいけど、だいぶ楽になった」
「良かった。ご飯作ったんだけど、食欲ある?」
「あんまりないけど……作ってくれたんだろ? ちょっと食べようかな」
「ほんと?? そしたら久間くんにもそう伝えてくるね。準備できたらリビング来てね」

 そう言って、うれしそうに有栖が出ていった。

「なんか……うれしそうだな、ジュン」

 そう黒埼に向かって言うと、バレバレだよな。と黒埼が笑って返した。

「何が?」
「……アキちゃん、気づいてないの?」
「何を?」
「……これって天然って言うの?」
「は? 俺が? なんで?」
「まあ……気づいてないならそれでいいんじゃない?」

 そう言って、黒埼が立ち上がってこちらに右手を差し出した。

「行こ」

 訳の分からないまま、黒埼の手を取る。ゆっくりとベッドから立ち上がった。黒埼からもらった時計と帽子をそっとサイドテーブルに置いた。

「アキちゃん」

 呼ばれて振り返ると、チュッと軽くキスをされた。

「……何?」
「やっぱり今日は変だな、アキちゃん」
「……そうか?」
「ん」

 じっと黒埼に見つめられて、心の中を読まれそうな気がして怖かった。誤魔化すように会話を続ける。

「なんで急にキスしたわけ?」
「したかったから」
「はあ……」
「アキちゃん、キス嫌い? 気持ちいいじゃん」
「気持ちいいかはよく分かんねぇけど」
「え~、違うの?」
「……気持ちいいかは分かんねぇけど……楽しいんじゃね?」
「…………」

 黒埼がちょっと目を見開いた。そこからゆっくりと目を細めて微かに笑う。

「なにそれ」
「ほら、行くぞ」

 黒埼のツッコミを無視して、先に寝室のドアへと向かう。黒埼が後からついてくる気配がした。

「あれ?」

 廊下から見える、リビングのドアの向こうが真っ暗だった。

「なんで電気が点いてないの? みんなは?」
「行けば分かんじゃない?」

 てか、これでも気づかないアキちゃんが凄いよな。そう言って黒埼が苦笑いした。何言ってんの? と黒埼を見返してから、リビングのドアへと向かう。すると。

『来たっ』
『クラッカー用意して、はやくっ』
『あ、ろうそく点けるの忘れた』
『何してんだよ! 尚人!』

 ドアノブをつかんだ時、リビングからそんな馬鹿でかい会話が晃良の耳に届いた。そこでようやく事態がみ込めた。

 そういうことか。

 晃良は、ふっと笑って、少し時間を置いてから、ゆっくりとドアを開けた。

 声、でかっ、と後ろで黒埼がつぶやくのを聞きながら。
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