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Just the way it is ⑥

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 注文を済ませ、しばらくたわいのない会話をした。そこから自然とクライアントの話になる。

「晃良くんたちのクライアント、嫌な奴なんだろ?」
「まあな。でも俺らは今回あんまり絡みがないから」
「ラッキーだったよね」
「そいつのうわさよく聞くもんな。隠し子がめちゃめちゃいるとか。ちょっとミスしただけで平気でクビ切るとか。恨まれてもしゃーないよな」
「そうだな。だけど、クライアントには変わりないからな。依頼受けたからにはどんな奴でも守らねーとだし」
「前から脅迫文を送られたりとかはしょっちゅうだったみたいだけど、なんか今回は結構、本気度が高いみたいだよ」
「それ、どういうこと?」

 涼が尚人に尋ねた。

「なんか、脅迫文も鬼気迫るものがあったみたいだし、たぶんクライアント自身も身に覚えがあったんじゃない? だからとりあえずは警護を増やしとこ、みたいな感じなんだと思う」
「犯人像はつかめてんの?」
「まあ、直近で仕事上のトラブルがあった人間が何人かいるのと、あと女関係。そこら辺でリストは上がってきてる」
「めちゃめちゃ多いけど」

 そんな話をしていると、注文した料理が運ばれてきた。前回の晃良と同じように、食べ始めた途端、あまりの美味しさに尚人たちも驚いた。全員が会話そっちのけで夢中になって食べ進める。普段は家で騒がしく食事をしているだけに、こんな沈黙の中でひたすら手だけを動かしている自分たちが滑稽に見えた。

 その後、ランチセットのデザートとコーヒーを堪能していると、先ほどの店員が挨拶に現れた。

「料理はいかがでしたでしょうか?」
「とても美味しかったです」
「それはありがとうございます。黒埼様にもよろしくお伝えください」

 そこでふと疑問に思って聞いてみる。

「黒埼ってよく来るんですか?」
「そうですね。ここ数ヶ月は、お客様とご来店いただいた以外にはいらっしゃいませんでしたが……。その前は、月に1、2度ぐらいは」
「それって1人ですか?」

 尚人が会話に入ってきた。

「いえ。いつもお連れの方がいらっしゃいました」
「なんか、ジュンとよく来てるって言ってたぞ」

 そう尚人に言うと、今度は涼が店員に尋ねた。

「あの、連れの奴って、小さくて変わった服着た奴でした?」
「ああ、有栖様のことでしょうか? そうですね、有栖様とも何度かいらっしゃいましたけど……。他の方の時もありました」
「他……?」

 ここでなんとなく微妙な空気が流れた。尚人が店員に再び尋ねる。

「他って……男ですか?」
「それは……」

 店員は、いくら知り合いとはいえ、ここまで他の客のことをべらべらと話していいものかと躊躇ちゅうちょした様子を見せた。そこに、涼が背中を押すかのように店員に話しかけた。

「あの、俺ら黒埼くんとめちゃくちゃ友達なんで。言っても全然問題ないですし、迷惑もかけませんから」
「そうですか……あの、私もそんなにはっきりとは覚えておりませんが……男性の時もありましたし、女性の時もありました」
「え? じゃあ、毎回違う人だったんですか? 有栖くん以外」
「そうですね……。同じ方を見かけたことはなかったように思います」
「…………」

 尚人と涼が一斉に晃良の方を見た。晃良の胸の中に、なんとも言えない重い塊が生まれた気がした。
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