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Going out with you ⑥

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 晃良は作戦を変えた。

「……黒埼」
「何?」
「別にお前とヤりたくないわけじゃないんだって」
「え?」
「だけど……まだお前と再会したばっかりだし。お前との昔のことも思い出せてないし。心の準備みたいなのができてなくてさ。なんて言うか、お前とするんだったら、その……そう、特別なものにしたいっていうか……大事にしたいっていうか……」
「特別……?」
「そう」

 ここで、晃良は抵抗する気持ちを必死に押さえて、自分が一番イケてると思っている甘えた上目使いで黒埼を見た。

「黒埼との初めてはちゃんとしたいからさ。だから……記憶が戻って俺の心の準備ができるまで待ってくれるか?」
「……うん」

 黒埼が晃良を凝視しつつ、子供のように素直にこくりとうなずいた。晃良は心の中で勝利のガッツポーズをする。

 作戦成功。

 引いてダメなら押してみる。これは以前、黒埼の専属ボディーガードにさせらせそうになった際に使った手と同じだった。ちょっと向こうが喜びそうな言葉を織り交ぜて、抵抗せずに歩み寄るような態度を見せる。いつも自分勝手に押すだけの黒埼は、晃良から押されることに免疫がないようだった。そこに、さらに甘えた感じを足してみたのだが、どうやら効果てきめんだったようだ。

「俺がいいって言うまで、我慢してくれるよな?」
「うん、我慢する」

 またまた素直に黒埼がうなずいた。まるで借りてきた猫みたいだった。可愛く黒埼にびるのは晃良には苦行のなにものでもないが、これをすれば、なぜか黒埼が喜んで言うことを聞いてくれることを知ったのは良かったのかもしれない。そのときの黒埼の頭の中は想像したくもないが。

「で、服着るから、リビングで待ってて」
「うん、待ってる」

 そう言って黒埼は大人しく部屋を出ていった。素早く服を着ると、リビングへと戻る。黒埼が、行儀良く膝に両手を乗せて、ちょこんとソファに座って待っていた。

「黒埼、コーヒー飲む?」
「飲む。だけど、あんまり時間ないからのんびりはできないかも」
「え? なんで?」
「忙しいときに勝手に抜けてきたから。夜には帰らなきゃなんない」
「そうなのか。だったら、別の日でもよかったのに」
「でも、アキちゃん、今日逃したら休みないだろ? しばらく」
「そうだけど……」

 またしても、晃良の中に先ほど生まれた疑問が戻ってきた。この、晃良のスケジュールを全て把握しているかのような黒埼の態度に。追求してみようか迷ったが、答えを知るのがなんとなく怖かったので、この件はやはりスルーすることに決めた。
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