上 下
51 / 239

クッキー・センセーション ⑤

しおりを挟む
 来やがった……。

 尚人がニヤニヤした顔で晃良を見ながら応対に出た。

「はい」
『トリック・オア・トリート!!』

 音が割れるぐらいのデカい声がモニターから聞こえてきた。尚人が声を出さずに笑って、手招きしている。涼と2人でモニターを覗くと、明らかに黒埼と有栖と思える2人組が、定番の有名ホラー映画のキャラマスクをかぶって、オモチャのナイフを持って立っていた。晃良はベタ過ぎるその姿に思わずモニターを切った。

「あれ? 晃良くん、入れてあげないの?」
「体が思わず拒否った」

 そんな会話をしている内にまたピンポーン、とインターホンが鳴らされた。モニターが再び映し出される。

『トリック・オア・トリート!!』

 さっきと同じ絵図でまた2人が楽しそうに叫んだ。晃良はその絵面に耐えられず、再びモニターを切る。

「ちょっ、いいの?? 晃良くん」
「いや、おもしろなさ過ぎて、耐えられねえし」
「だけど、晃良くん、そんなことすると相手が相手だし大変じゃないの?」

 ピンポーン、と再び音がしてモニターがつく。今度は、格好はそのままだが言葉を発さず静かに佇んだ2人が映し出された。

『アキちゃん……。開けないと、本当にイタズラするよ』

 低い声で黒埼が呟くように言った。晃良の背筋がざわわっと音を立てる。

 こわっ。

 どんな「イタズラ」をされるか分かったもんじゃないので、慌ててロックを解除した。
しおりを挟む

処理中です...