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Don't believe in never ⑧
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「あいつのために……ここ、解した?」
「あ……ちょ……」
黒埼の指先の執拗な動きが、晃良の体を熱くしていった。前回と同様に、晃良の感じるポイントを絶妙に攻めてくる。
「そんなに……エッチしたかった?」
「いや、違う……あっ」
晃良が答える前に、黒埼の指がぐっと中へと押し込まれるのを感じて、晃良は声を上げた。黒埼の中指が晃良の中でゆっくりと動き回る。そして徐々にその動きは激しくなっていった。
「ここに、あいつの挿れて欲しかった?」
「そんなの……お前に関係ないだろ……んっ」
黒埼がわざと強く指を奥へと突いた。晃良は押し寄せてくる快感の波に両手でシーツを掴んで耐える。
「関係ある」
「なんで……」
「……約束したから」
「……何を?」
「言わない」
「んっ」
黒埼が指を増やした。その数本の指を、まるで生き物のように晃良の中で蠢蠢かす。晃良の自身が膨らんでいく。絶え間なく与えられる快感に、堪らず腰を浮かして自身へ触れようと右手を伸ばした。しかし、晃良の手がそこに届く前に、黒埼の左手が晃良の自身を強く掴んだ。
「んんっ」
びくりと晃良の腰が波打った。
「イきたい?」
黒埼が静かに尋ねた。晃良は最後の抵抗を見せるように頭を横に振った。次の瞬間、黒埼の左手が唐突に晃良から離れていった。同時に、晃良の中から黒埼の指も抜かれた。
押さえ付けていた黒埼の力が緩んだ隙をついて、晃良は素早く起き上がり黒埼と間合いを取った。急いで下着を履き直して、バスローブを整える。黒埼は晃良を追うこともなく、そのままベッドに腰をかけてじっとしていた。距離を取ってから黒埼を窺う。床を見つめる黒埼の表情を見て、はっとなった。
とても、悲しい顔をしていた。出会ってから見たこともない、辛そうな顔だった。
「黒埼……」
思わず声をかける。黒埼はそれに答えようとはせず、晃良を見ようともしなかった。永遠にも思えるような長い沈黙が流れた後、黒埼が呟くように晃良に問いかけた。
「なんで……覚えてないんだよ」
「…………」
その言葉が、深く晃良の心に突き刺さる。ああそうか。晃良は今まで、自分だけが失った記憶に囚われて苦しんできたと思っていたけど。黒埼もきっと苦しんできたのだろう。自分のことを完全に忘れられる、その辛さに。晃良は、思い出せないものはしょうがない、と諦めていた。黒埼はきっと、そんな晃良を見て悲しかったに違いない。
もし、自分に大事な家族や恋人や友人がいて。その誰かが突然記憶喪失になったら。きっと思い出してもらおうと必死になるだろう。それなのに、本人は失ったことを早々に受け入れて、とっとと先に進もうとしていたら。思い出すことなんて無理だろうと割り切っていたら。残された方はその喪失感を一生抱えながら生きていかなければならない。
自分は黒埼に対して、とても酷な態度をしていたのかもしれない。
「あ……ちょ……」
黒埼の指先の執拗な動きが、晃良の体を熱くしていった。前回と同様に、晃良の感じるポイントを絶妙に攻めてくる。
「そんなに……エッチしたかった?」
「いや、違う……あっ」
晃良が答える前に、黒埼の指がぐっと中へと押し込まれるのを感じて、晃良は声を上げた。黒埼の中指が晃良の中でゆっくりと動き回る。そして徐々にその動きは激しくなっていった。
「ここに、あいつの挿れて欲しかった?」
「そんなの……お前に関係ないだろ……んっ」
黒埼がわざと強く指を奥へと突いた。晃良は押し寄せてくる快感の波に両手でシーツを掴んで耐える。
「関係ある」
「なんで……」
「……約束したから」
「……何を?」
「言わない」
「んっ」
黒埼が指を増やした。その数本の指を、まるで生き物のように晃良の中で蠢蠢かす。晃良の自身が膨らんでいく。絶え間なく与えられる快感に、堪らず腰を浮かして自身へ触れようと右手を伸ばした。しかし、晃良の手がそこに届く前に、黒埼の左手が晃良の自身を強く掴んだ。
「んんっ」
びくりと晃良の腰が波打った。
「イきたい?」
黒埼が静かに尋ねた。晃良は最後の抵抗を見せるように頭を横に振った。次の瞬間、黒埼の左手が唐突に晃良から離れていった。同時に、晃良の中から黒埼の指も抜かれた。
押さえ付けていた黒埼の力が緩んだ隙をついて、晃良は素早く起き上がり黒埼と間合いを取った。急いで下着を履き直して、バスローブを整える。黒埼は晃良を追うこともなく、そのままベッドに腰をかけてじっとしていた。距離を取ってから黒埼を窺う。床を見つめる黒埼の表情を見て、はっとなった。
とても、悲しい顔をしていた。出会ってから見たこともない、辛そうな顔だった。
「黒埼……」
思わず声をかける。黒埼はそれに答えようとはせず、晃良を見ようともしなかった。永遠にも思えるような長い沈黙が流れた後、黒埼が呟くように晃良に問いかけた。
「なんで……覚えてないんだよ」
「…………」
その言葉が、深く晃良の心に突き刺さる。ああそうか。晃良は今まで、自分だけが失った記憶に囚われて苦しんできたと思っていたけど。黒埼もきっと苦しんできたのだろう。自分のことを完全に忘れられる、その辛さに。晃良は、思い出せないものはしょうがない、と諦めていた。黒埼はきっと、そんな晃良を見て悲しかったに違いない。
もし、自分に大事な家族や恋人や友人がいて。その誰かが突然記憶喪失になったら。きっと思い出してもらおうと必死になるだろう。それなのに、本人は失ったことを早々に受け入れて、とっとと先に進もうとしていたら。思い出すことなんて無理だろうと割り切っていたら。残された方はその喪失感を一生抱えながら生きていかなければならない。
自分は黒埼に対して、とても酷な態度をしていたのかもしれない。
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