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Don't believe in never ③

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 その翌週の仕事上がりの夜。一旦帰宅して私服に変えてから、晃良は待ち合わせの居酒屋へと出かけた。

 尚人に誰か紹介してくれないかと頼んだところ、ちょうどセフレ経由の知り合いで新しい相手を探している男がいたらしく、すんなりと会うまでの話が決まったのだった。お互い一夜限りの相手を求めているわけではなかったので、会ってウマが合わなければそれまでということも事前に了承済みだった。

 居酒屋に着くと、相手はすでに到着していた。晃良の好みである綺麗系の顔というわけではなかったが、人なつっこそうな笑顔が可愛らしい年下の男だった。消防士だというその彼は、晃良よりも体格が良く、とても純粋な性格に見えた。最近、おかしな人間ばかり(特に黒埼)相手にしていたので、この素朴な男がとても新鮮に見えた。

 居酒屋を出て、バーに立ち寄った後、タクシーで晃良を家まで送ってくれた。玄関まで送りたいと言われたので、そのままタクシーには待ってもらい、一緒にマンションのエントランスをくぐる。エレベーターに入った途端、キスをされた。

 あらら。

 なんとなく予想はしていたので、そこまで驚かなかったが、触れるだけのキスに顔を真っ赤にしている男が可愛く見えた。

「乾さん、あの、また会ってもらえますか?」
「いいよ」
「本当ですか?? 俺、明日、早番なんで夕方から空いてるんですけど、どうですか? 急ですみません。でも、あの、早く会いたくて」
「俺、明日、休みだから大丈夫」
「良かった。そしたらドライブしません? 俺、迎えにいきます」
「いいじゃん、ドライブ。そしたら待ってるな」

 明日会う約束をして玄関前で別れた後、男は元気に手を振りながら帰っていった。トントン拍子に事が進んで嬉しい反面、なんとなく複雑な気持ちになる。

 晃良の付き合いはいつもそうだった。あっさりと始まるのだ。何の弊害もなく、気が合えばなんとなく付き合い始めて、突然始まりと同じようにあっさりと終わる(たいてい相手に別れを告げられて)。もちろん相手に対して愛情と呼べる類のものはいつもある。けれど、「燃え上がる」ような関係は今まで一度も経験したことがなかった。

「燃え上がる」のくだりで、カメラの向こうで見た、黒埼のいやらしい笑顔を思い出して眉をひそめる。

 なんやかんやでいつも自分の記憶に割り込んでくるあの男。昔の記憶にははっきりと出てこないくせに。
 
 折角、楽しい夜を過ごしていたのに台無しだ。晃良はふるふると頭を振って、黒埼のいやらしい顔を頭の中から追い出した。それから、いつものように玄関を解錠して、ただいま、と中へ入った。
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