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Don't believe in never ②
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しかし、晃良の立場は弱かった。相手は金も権力もあり、晃良の所属するエージェントからすればお得意様の1人だった。向こうの要望をそう簡単にはねのけるわけがない。
黒埼サイドから、黒埼の専属ボディーガードとして晃良と正式契約したい、と申し入れがあったとき、即座に黒埼に連絡を取った(黒埼の助手の有栖と連絡先を交換していた)。オンラインでのビデオ通話に繋げてもらい、アキちゃんだ~っとはしゃぐ黒埼とニコニコ笑顔の有栖を見ながら、専属契約だけは勘弁して欲しい、と土下座までしたのだった。
『……そんなに嫌なわけ?』
拗ねたように呟く黒埼の機嫌を損ねて交渉決裂になるのを避けるため、晃良はできる限り感情を抑えて答えた。
『嫌ではないんだけど、専属になるとアメリカに渡ることになるし。俺は、日本の方が性に合ってるし、ほら、それに、しょっちゅう一緒にいるより、たまに会った方がお互い新鮮だろ?』
『新鮮……?』
『そうそう。たまに会うから、こう、余計に感動するって言うか、燃え上がるって言うか……』
自分で口走って、俺は何を言ってんだっ、と心の中で叫びながら、顔は笑顔で交渉を続ける。
『燃え上がる……』
その晃良の一言に、黒埼がわかりやすく反応する。何かを想像してニヤリといやらしく笑う姿がカメラ越しでもわかった。晃良の背中が、ぞわっ、と音を立てる。
『まあ、だから、専属はとりあえず止めて、日本に来たときに、な?』
言葉をうまく濁しながら、なんとか専属契約だけは避けられないかと黒埼の反応を探る。
少し何かを考えるような表情をした後、黒埼が口を開いた。
『わかった』
『マジで??』
『……なに、その嬉しそうな反応』
『え? あ、いや、違うって、嬉しいってわけじゃないって』
『専属契約しない代わりに、条件があるんだけど』
『……なんでしょうか』
『俺が日本に行くときには、アキちゃん家に泊めて』
『……それは……俺の一存では決められない』
『駄目だったら、専属契約してもらうから』
『わかった。その条件呑む』
尚人、涼、すまん。きっと後でもの凄く文句を言うであろう2人(特に涼)に向かって心の中で謝罪する。しかしこの機会を逃したら、晃良に明日はない。
『あと、1回はデートして』
『……わかった』
そんなわけで、なんとか黒埼の専属ボディーガードになることは回避できたのだが。離れて暮らす代わりに、黒埼の晃良に対しての愛情アピールが日に日に酷くなっていくこの状況に、早くも晃良は疲れ切っていた。
はあっ、と大きく溜息を吐きながら、花瓶の中にバラを飾り、リビングの棚の上へと置いた。ふわっ、とバラの甘い香りが漂う。その香りに、そういえば黒埼の香水は、この甘い匂いとは違った清涼感のある爽やかな香りだったな(黒埼のねちっこい性格とは対照的に)、と思い出す。同時に、あのときの、晃良の体を這った黒埼の手の感触も蘇ってくる。その記憶に、ほんの少しだけ晃良の体が疼いた。
そういえばここ最近、仕事が忙しかったのもあるが、誰かと体の関係を持つことから随分と遠ざかっていた。新しい男と出会う機会も時間もなかったし。もしかしたら他に相手がいないから、いつまで経ってもあの黒埼の手の感触が忘れられないのかもしれない。ここは1つ、他を探してみようか。
尚人に誰か紹介してもらおう、と心に決めてバラから離れると、着替えるために自室へと向かった。
黒埼サイドから、黒埼の専属ボディーガードとして晃良と正式契約したい、と申し入れがあったとき、即座に黒埼に連絡を取った(黒埼の助手の有栖と連絡先を交換していた)。オンラインでのビデオ通話に繋げてもらい、アキちゃんだ~っとはしゃぐ黒埼とニコニコ笑顔の有栖を見ながら、専属契約だけは勘弁して欲しい、と土下座までしたのだった。
『……そんなに嫌なわけ?』
拗ねたように呟く黒埼の機嫌を損ねて交渉決裂になるのを避けるため、晃良はできる限り感情を抑えて答えた。
『嫌ではないんだけど、専属になるとアメリカに渡ることになるし。俺は、日本の方が性に合ってるし、ほら、それに、しょっちゅう一緒にいるより、たまに会った方がお互い新鮮だろ?』
『新鮮……?』
『そうそう。たまに会うから、こう、余計に感動するって言うか、燃え上がるって言うか……』
自分で口走って、俺は何を言ってんだっ、と心の中で叫びながら、顔は笑顔で交渉を続ける。
『燃え上がる……』
その晃良の一言に、黒埼がわかりやすく反応する。何かを想像してニヤリといやらしく笑う姿がカメラ越しでもわかった。晃良の背中が、ぞわっ、と音を立てる。
『まあ、だから、専属はとりあえず止めて、日本に来たときに、な?』
言葉をうまく濁しながら、なんとか専属契約だけは避けられないかと黒埼の反応を探る。
少し何かを考えるような表情をした後、黒埼が口を開いた。
『わかった』
『マジで??』
『……なに、その嬉しそうな反応』
『え? あ、いや、違うって、嬉しいってわけじゃないって』
『専属契約しない代わりに、条件があるんだけど』
『……なんでしょうか』
『俺が日本に行くときには、アキちゃん家に泊めて』
『……それは……俺の一存では決められない』
『駄目だったら、専属契約してもらうから』
『わかった。その条件呑む』
尚人、涼、すまん。きっと後でもの凄く文句を言うであろう2人(特に涼)に向かって心の中で謝罪する。しかしこの機会を逃したら、晃良に明日はない。
『あと、1回はデートして』
『……わかった』
そんなわけで、なんとか黒埼の専属ボディーガードになることは回避できたのだが。離れて暮らす代わりに、黒埼の晃良に対しての愛情アピールが日に日に酷くなっていくこの状況に、早くも晃良は疲れ切っていた。
はあっ、と大きく溜息を吐きながら、花瓶の中にバラを飾り、リビングの棚の上へと置いた。ふわっ、とバラの甘い香りが漂う。その香りに、そういえば黒埼の香水は、この甘い匂いとは違った清涼感のある爽やかな香りだったな(黒埼のねちっこい性格とは対照的に)、と思い出す。同時に、あのときの、晃良の体を這った黒埼の手の感触も蘇ってくる。その記憶に、ほんの少しだけ晃良の体が疼いた。
そういえばここ最近、仕事が忙しかったのもあるが、誰かと体の関係を持つことから随分と遠ざかっていた。新しい男と出会う機会も時間もなかったし。もしかしたら他に相手がいないから、いつまで経ってもあの黒埼の手の感触が忘れられないのかもしれない。ここは1つ、他を探してみようか。
尚人に誰か紹介してもらおう、と心に決めてバラから離れると、着替えるために自室へと向かった。
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