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Just the beginning ㉔

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『ガッちゃんも俺も、見た目ぼけっとしてるから、訓練受けたって言っても信じてもらないほうが多いんだけど。アッキーが気づいてくれてたなんて、嬉しいなぁ』

 有栖は相手を油断させるような柔らかい雰囲気を持っているので気づかれにくいのだろうが、おそらく黒崎と同じぐらいの腕の持ち主ではないか。そう睨んでカマをかけてみたのだ。さっき、失神した黒崎を見ても全く動じなかったのもあって疑っていたが、やはりそうだった。有栖のあっさりと認めた様子から見て、特に隠していたわけでもないようだ。ならなぜ。

『そしたら、なんで俺に依頼してきたんだ?』
『うん、だからそれは、俺が言っていいのかわかんないんだけど、ガッちゃんがアッキーのこと、好きだから』
『……それは黒崎から聞いた』
『え?? そうなの?? なんだ、ガッちゃん、告白したんだぁ。アッキー、さっきガッちゃんから何にも聞いてないって言ってたから、てっきり告白してないのかと思ってたけど。そっかぁ。良かったなぁ、ガッちゃん』

 章良の急降下するテンションとは裏腹に、有栖が嬉しそうにはしゃぎ出した。すかさずツッコむ。

『だから、そういうことじゃなくて』
『え?』
『……黒埼は何年も前から俺を追ってたらしいけど、好きとかそんな理由で、何年も追い回したりしねぇよな? 他に何か目的か理由がなかったらおかしいだろ。そうじゃなかったら、それこそ、本当にど変態の頭おかしいストーカーだろーが』
『え……だけど……ほんとにそうだから』
『……本当に?』
『そう』
『……嘘だろ』
『嘘じゃないって。ガッちゃん、アッキーのこと、ずーっと好きだったから。ガッちゃん、素直じゃないし、照れ屋だから、時々愛情表現がおかしくて誤解されることもあるかもしれないけど。今回も我慢でなくなったからアッキーに告白する~って言って向こうから来たし』
『いやいや、そんなの、ありえねぇ……』

 章良の背筋がひんやりとする。

『好きだから』

 からかわれたと思っていた、あの黒埼の言葉は、嘘じゃなかったということなのか。何かもっと他に裏があるに違いないと思っていたのに。だからこそ、体を触られた上に誤魔化されたと腹が立って、有無を言わさず鉄拳を食らわしてしまったのだ。

 いや、しかし、そんな単純な理由で、何年間もわざわざアメリカから章良にこっそり会いに来ていて、我慢できないからって最終的に告白されても。しかもあんな形で。
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