上 下
6 / 239

Just the beginning ⑤

しおりを挟む
 3人が出会ったのは警察所勤めのときだった。

 章良は、東京都の警察官採用試験を優秀な成績で合格し、訓練や研修などを経て最終的に警備部門へと配属された後、希望を出して機動隊の隊員となった。章良の場合、その人並み外れた身体能力が評価されたことにより、「特別訓練員」として認められ、難なく機動隊員になれたのだが、涼と尚人に出会ったのもそこで勤務していた頃だった。
 
 涼は章良が機動隊に配属されて約2年後に、尚人は更に1年経ってから配属されてきた。章良と同様に特殊な能力を持ち合わせていた2人も、「特別訓練員」という枠組みだったらしい。

 その頃から、章良くん、と自分を兄の様に慕ってくれた2人とは、自然に一緒に行動するようになっていた。口が悪くて気の強い涼と、いつも落ち着いていてあまり感情を出さない尚人。そして真面目だけが取り柄の自分。全く性格が違うのに、なぜだかウマが合ったから不思議だ。

 機動隊として勤務していた中で、日本社会、警察社会の汚い部分を章良は嫌と言うほど目にしてきた。金と権力が全て。守られる対象は、お偉い政治家だけ。その家族はどれだけ危険にさらされても、警護対象ではない、という理由から助けることもできない。警護とは別の部署にいたにも関わらず、毎日耳にする警察庁の横暴な言動。しわ寄せが来るのはもちろん都道府県警察だ。

 自分はこんな汚い、自分のことしか考えていない奴らのために、武術を使いたかったわけではない。

 本当に助けを必要としている人間は他にいる。

 そう自分の中で鬱屈した感情が高まっていたとき、国際的に活躍する民営の警護団体があることを知った。日本では民間ボディーガードはまだまだ立場が弱い。法的には何の権威も持たず、所持できる武器も限られている。

 しかし、その団体ならば海外では銃での護衛も可能だし、訓練も受けることができる。それに、例え日本での警護であっても、警護対象ではないから、という理由で助けられないよりずっとマシだ。逆に言えば、こちらにも警護対象を選ぶ権利がある。まあ、もちろん食べていかなくてはならないので、えり好みばかりはしてられないが、少なくとも本当に助けが必要な人たちを自分たちで判断し、守ることができる。

 章良は迷わずその道を取った。27歳での決断だった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界魔王と薬師のエルフ

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:48

美醜逆転世界でフツメンの俺が愛されすぎている件について

BL / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:267

水の流れるところ

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:26

元カノよりも今彼です

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:60

グレイティニンゲン牧場へようこそ!

BL / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:116

腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

BL / 連載中 24h.ポイント:8,747pt お気に入り:2,439

社畜が男二人に拉致されて無人島性活

BL / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:720

消えた一族

BL / 連載中 24h.ポイント:9,579pt お気に入り:843

処理中です...