29 / 58
クローバー
運命の分かれ道 ①
しおりを挟む
由美との会話から数日が経った。その間に俺の受験結果は次々と発表され、残るは最後に受験した県外の大学の結果発表だけとなっていた。
ここまで幸運なのか、実力なのか、全ての大学から合格通知を受け取っていた。なので、県外の大学が受かっていなくても、一応浪人は免れる。
あれから。亜貴に何度も電話しようとした。だが、勇気が持てなかった。あれだけ亜貴を傷つけておいて、いまさらどのように接したらいいのか分からなかった。
俺って、結構なヘタレやったんやな。
亜貴は無事に希望の専門学校に入学が決まったと母親伝いに聞いた。おめでとう、の一言すらも伝えられない自分の意気地なし具合に嫌気が差す。
自室でPCの前に座って、はあっと大きな溜息をついた。画面に提示されている時刻を確認する。
今日はその最後に受験した大学の合格発表の日だった。もしここが受かっていれば。俺はきっとこの大学を選択して家を出るだろう。そして、亜貴とは離ればなれになるだろう。
この合否の結果は、2人の運命を左右する。そうとさえ思えた。
その運命の結果は大学構内の掲示板と、大学のホームページ上に同時に公開されることになっていた。公開時刻まではまだ10分ほどあった。
机に置きっぱなしの携帯をちらりと見る。亜貴に電話をしようか。先ほどからずっと迷い続けていた。合否の結果が分かる前に、他力本願で自分たちの運命が決まる前に、話したい。そう思った。
『ちゃんと謝って、自分の気持ちに素直に従った方がええよ。やないと、後悔するで』
先日、由美に言われた言葉が蘇る。
自分の気持ちに素直に従うことはできないかもしれない。自分がそうすることは、自分だけの問題じゃなく、亜貴を巻き込んでしまうことだから。だけど、あの日、亜貴に吐いた本心ではなかった言葉で亜貴を傷つけたことは謝りたい。
俺は手を伸ばして、携帯を掴んだ。亜貴の番号を呼び出す。もしかしたらもう出てもくれないかもしれないが。
数秒迷った後、俺は意を決して携帯の画面を押した。
ここまで幸運なのか、実力なのか、全ての大学から合格通知を受け取っていた。なので、県外の大学が受かっていなくても、一応浪人は免れる。
あれから。亜貴に何度も電話しようとした。だが、勇気が持てなかった。あれだけ亜貴を傷つけておいて、いまさらどのように接したらいいのか分からなかった。
俺って、結構なヘタレやったんやな。
亜貴は無事に希望の専門学校に入学が決まったと母親伝いに聞いた。おめでとう、の一言すらも伝えられない自分の意気地なし具合に嫌気が差す。
自室でPCの前に座って、はあっと大きな溜息をついた。画面に提示されている時刻を確認する。
今日はその最後に受験した大学の合格発表の日だった。もしここが受かっていれば。俺はきっとこの大学を選択して家を出るだろう。そして、亜貴とは離ればなれになるだろう。
この合否の結果は、2人の運命を左右する。そうとさえ思えた。
その運命の結果は大学構内の掲示板と、大学のホームページ上に同時に公開されることになっていた。公開時刻まではまだ10分ほどあった。
机に置きっぱなしの携帯をちらりと見る。亜貴に電話をしようか。先ほどからずっと迷い続けていた。合否の結果が分かる前に、他力本願で自分たちの運命が決まる前に、話したい。そう思った。
『ちゃんと謝って、自分の気持ちに素直に従った方がええよ。やないと、後悔するで』
先日、由美に言われた言葉が蘇る。
自分の気持ちに素直に従うことはできないかもしれない。自分がそうすることは、自分だけの問題じゃなく、亜貴を巻き込んでしまうことだから。だけど、あの日、亜貴に吐いた本心ではなかった言葉で亜貴を傷つけたことは謝りたい。
俺は手を伸ばして、携帯を掴んだ。亜貴の番号を呼び出す。もしかしたらもう出てもくれないかもしれないが。
数秒迷った後、俺は意を決して携帯の画面を押した。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
新緑の少年
東城
BL
大雨の中、車で帰宅中の主人公は道に倒れている少年を発見する。
家に連れて帰り事情を聞くと、少年は母親を刺したと言う。
警察に連絡し同伴で県警に行くが、少年の身の上話に同情し主人公は少年を一時的に引き取ることに。
悪い子ではなく複雑な家庭環境で追い詰められての犯行だった。
日々の生活の中で交流を深める二人だが、ちょっとしたトラブルに見舞われてしまう。
少年と関わるうちに恋心のような慈愛のような不思議な感情に戸惑う主人公。
少年は主人公に対して、保護者のような気持ちを抱いていた。
ハッピーエンドの物語。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる