クローバー

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クローバー

彼女 ③

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 たまに2人で行くいつものカラオケ店へと入る。学校帰りのこの時間は学生が多い。様々な制服がロビーを行き交う中、受付を済ませる。ラッキーなことに最後の1室が空いていて、そこに滑り込むことができた。

 いつもするように適当に飲み物を頼み、適当に歌う。由美も俺もそこそこ歌は上手かった。お互い歌いたいものを歌いたいように歌う。盛り上げるわけでもなく、かと言って聴いていないわけでもない。由美が言うところの『似たもの同士』のせいか、それぞれがマイペースで過ごすこの空間は結構居心地がよかった。

 歌い出して2時間ぐらい経った頃。なんとなく歌う曲が途切れた。2人ともモニター型のリモコンに目を落として曲を探していた。

「洋介」

 ふと、名前を呼ばれて顔を上げて由美の方を見た。そのタイミングで由美からキスされた。数秒、唇を押しつけられたままじっとしていると。ゆっくりと由美から離れていった。

「どしたん? 急に」
「別に。いつもこんな感じやん」
「そうやけど……」
「したくなったからしただけ」
「はあ……」

 由美はそこにお菓子があったから摘まんだだけ、みたいな軽さでそう言った。由美にはよくこうやって軽く摘ままれるので、もう驚くことはないが。

「なあ」
「ん?」
「うち来る?」
「…………」
「今日、親遅いから」
「……ええよ」

 由美とはいつもこんな感じだった。気まぐれに由美が言い出して、一通り済ませる。俺から誘ったことはない。由美がそれを気にしている様子もなかった。
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