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第一章
動き出した運命
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「えっと、熾月零静...さんですよね?」
「あぁ...俺の事は好きに呼んでも構わないぞ。それより驚かせて悪い。少し油断していたからつい身体が勝手に反応して」
右手の甲をかきながらそう伝える。
「じゃあ、熾月くんで。私のことは海月でいいよ。あと大丈夫だよ。私こそいきなり後ろに立ってごめんなさい。」
「いや、俺の注意が散漫してたせいだし謝らないでくれ海月。」
「それよりどうしてどうしてここに?こんな遅くにわざわざ....」
「ここね、お母さんから教えて貰った場所なんだよね。この人口管理島のさらに斑鳩学園から1番近い神樹がすごく綺麗なんだって。」
「だから私も見てみようと思って昼に見ようと思ったんだけど、少し引越しの疲れが出て寝ちゃったんだよね。だからこの時間に来てみたって感じ」
「なるほどな。それで実際に見た感想はどうだ?何か感じたか?」
どうしてだろうか、いつもなら適当な理由を付けてその場を後にする筈が、何故だか気になって質問してしまっていた。
「そうだなぁ、つい目が奪われたって感じかな....こんなに綺麗な物が世界にあるんだなぁって。」
「そしてなにより私の相棒がここに漂う純粋な魔力に反応してすごく喜んでるのが嬉しいかな。」
そう海月が言った相棒とは、腰に身につけてる霊刀。確か咲夜って名前だったか。黒の鞘に綺麗な装飾が追加され、柄は垢での柄紐で綺麗に結ばれている。
「この子が気になる?すぅ......。」
彼女が持つ鞘から綺麗な模様が描かれている刀身が冷気を纏いながら姿を現す。
ただ鞘から抜いただけなのに、まるでこの場が凍ったような錯覚をするくらい冷たい冷気と雰囲気を放っていた。
「この子はうちの家が代々受け継いできた大業物の一振り。最初のこの子の使い手だった先代曰く、総ての物を凍てつかせ、邪悪なる物を斬り祓う刃....そう言い伝えれているものだよ。」
「だから私はこの咲夜に誓って、いつか訪れる戦いに向けてずっと切磋琢磨してきた。実際神々の戯れのせいで、魔のものはこの世界に産み落とされ、今も尚魔法使いたちと戦いを繰り広げている。」
「私はいつかその戦いに終止符を打つ為にこの咲夜と共に魔のものを、神々をこの手で斬り捨てて見せる。」
彼女がそう語っている姿は、ただ家の使命で動く道具ではなく、彼女自身の想いで成し遂げようとする、そう心に響かせてくる。
本気で彼女はこの戦いに終止符を打とうとしている。これほどの意志を持った魔法使いは同級にいるだろうか。いや、なんならこの学園の生徒で1番志を強く持っていると思う。
「そうか....海月ならやれそうだな。その強い志と信じる相棒があるのだから。俺はお前みたいなやつに出会えて良かったよ、尊敬する。」
「そうかな、うんありがとう。そうなるように頑張るよ。ふぅ....。」
そっと海月が息を吐くと霊刀は闇の中に消えていった。
「さて、夜も遅いし私は帰るね。明後日から授業だからまたよろしくね。じゃあ、おやすみなさい熾月くん。」
そう言って海月は去っていった。
「んっ.........。」
右手が少し疼く。忘れることが許されない、許すことが出来ないあの日の出来事が、今も尚この心を蝕む。
「そうだ....俺にだって海月の想いに負けるわけが無いくらいやらなければいけない事がある。」
「決して忘れることの出来ないあの日の事が。俺には成し遂げなければいけない事がある。その為なら俺は.........。」
疼く右手を握り締め、寮へと戻る。
「おはようございます。今日から新生活が始まります。慣れないことが多くあると思いますが、少しずつ頑張りましょう。では授業を始めます。」
あの日の夜から時間が経ち、新しい新生活が始まった。最初は座学をし、昼すぎからは各々の魔力測定と学校から支給される携帯型武装の振り分けが行われる。
この学園に入る前、魔法使いになるための準備として魔力移植が行われた。一般的な人間は最初の魔法使いたちの血縁者とは違い、魔力を体内に備わっていないため、魔力を他から分け与えられ、そこから自分で魔力を体内で生成を可能にする必要がある。それが一つの学園への入学テストとなっている。
ただ魔法使いたちから魔力を体内に流し込まれただけでは魔力の生成には至らない。じゃあ何を持って生成を可能にするかと言うと...魔力に対する耐性と本人の類稀なる素質、そして精神力を持つ者に魔力という奇跡が宿る。
300年前、神々の戯れで魔のもの達が世界に産み落とされたと同時に、神々の力が魔力という形で最初の魔法使いたちに宿った。なぜそれが12人なのかは定かではないが、そう言い伝えられている。
そして魔力が最初の魔法使いに宿った際、宿らなかった人間たちも少なからず魔力の残滓のようなものが身体に影響した。それが魔力耐性であり、それが幸か不幸か素質のある者は、他者から魔力を流し込まれると魔力の残滓に濃く影響し、魔力を生成可能となる。
ただそこには一つ問題があった。たとえどんなに魔力耐性があり、素質があったとしても、精神力が必要だった。
他者から貰う魔力によって魔力の残滓が反応した瞬間、強烈な不安感、不快感、恐怖感が心を蝕むのだ。それが何故引き起こされるのかは分からないが、一説によると他者から与えられたものは、体が異物とみなして排除するという働きが濃く影響し、それがこれらの反応を促して拒絶するのでは無いかと言われている。
だからこの異物を排除するという体の構造に対抗しうる精神力が必要になるという訳になる。しかもタチの悪いことにこの魔力の拒絶反応が起きると、精神に大きく影響し、何かしらの心の傷を与え、人によっては精神が壊されることもある。それが入学生が100人近くしか居ないという確固たる真実なのだ。
だから町中の人は魔法使いたちに敬意を評し、色んな支援をしてくれている。
《鐘の音》
「てことで、昼休みの後は魔力測定と
携帯型武装を渡すのでそのつもりでお願いします。」
「あぁ...俺の事は好きに呼んでも構わないぞ。それより驚かせて悪い。少し油断していたからつい身体が勝手に反応して」
右手の甲をかきながらそう伝える。
「じゃあ、熾月くんで。私のことは海月でいいよ。あと大丈夫だよ。私こそいきなり後ろに立ってごめんなさい。」
「いや、俺の注意が散漫してたせいだし謝らないでくれ海月。」
「それよりどうしてどうしてここに?こんな遅くにわざわざ....」
「ここね、お母さんから教えて貰った場所なんだよね。この人口管理島のさらに斑鳩学園から1番近い神樹がすごく綺麗なんだって。」
「だから私も見てみようと思って昼に見ようと思ったんだけど、少し引越しの疲れが出て寝ちゃったんだよね。だからこの時間に来てみたって感じ」
「なるほどな。それで実際に見た感想はどうだ?何か感じたか?」
どうしてだろうか、いつもなら適当な理由を付けてその場を後にする筈が、何故だか気になって質問してしまっていた。
「そうだなぁ、つい目が奪われたって感じかな....こんなに綺麗な物が世界にあるんだなぁって。」
「そしてなにより私の相棒がここに漂う純粋な魔力に反応してすごく喜んでるのが嬉しいかな。」
そう海月が言った相棒とは、腰に身につけてる霊刀。確か咲夜って名前だったか。黒の鞘に綺麗な装飾が追加され、柄は垢での柄紐で綺麗に結ばれている。
「この子が気になる?すぅ......。」
彼女が持つ鞘から綺麗な模様が描かれている刀身が冷気を纏いながら姿を現す。
ただ鞘から抜いただけなのに、まるでこの場が凍ったような錯覚をするくらい冷たい冷気と雰囲気を放っていた。
「この子はうちの家が代々受け継いできた大業物の一振り。最初のこの子の使い手だった先代曰く、総ての物を凍てつかせ、邪悪なる物を斬り祓う刃....そう言い伝えれているものだよ。」
「だから私はこの咲夜に誓って、いつか訪れる戦いに向けてずっと切磋琢磨してきた。実際神々の戯れのせいで、魔のものはこの世界に産み落とされ、今も尚魔法使いたちと戦いを繰り広げている。」
「私はいつかその戦いに終止符を打つ為にこの咲夜と共に魔のものを、神々をこの手で斬り捨てて見せる。」
彼女がそう語っている姿は、ただ家の使命で動く道具ではなく、彼女自身の想いで成し遂げようとする、そう心に響かせてくる。
本気で彼女はこの戦いに終止符を打とうとしている。これほどの意志を持った魔法使いは同級にいるだろうか。いや、なんならこの学園の生徒で1番志を強く持っていると思う。
「そうか....海月ならやれそうだな。その強い志と信じる相棒があるのだから。俺はお前みたいなやつに出会えて良かったよ、尊敬する。」
「そうかな、うんありがとう。そうなるように頑張るよ。ふぅ....。」
そっと海月が息を吐くと霊刀は闇の中に消えていった。
「さて、夜も遅いし私は帰るね。明後日から授業だからまたよろしくね。じゃあ、おやすみなさい熾月くん。」
そう言って海月は去っていった。
「んっ.........。」
右手が少し疼く。忘れることが許されない、許すことが出来ないあの日の出来事が、今も尚この心を蝕む。
「そうだ....俺にだって海月の想いに負けるわけが無いくらいやらなければいけない事がある。」
「決して忘れることの出来ないあの日の事が。俺には成し遂げなければいけない事がある。その為なら俺は.........。」
疼く右手を握り締め、寮へと戻る。
「おはようございます。今日から新生活が始まります。慣れないことが多くあると思いますが、少しずつ頑張りましょう。では授業を始めます。」
あの日の夜から時間が経ち、新しい新生活が始まった。最初は座学をし、昼すぎからは各々の魔力測定と学校から支給される携帯型武装の振り分けが行われる。
この学園に入る前、魔法使いになるための準備として魔力移植が行われた。一般的な人間は最初の魔法使いたちの血縁者とは違い、魔力を体内に備わっていないため、魔力を他から分け与えられ、そこから自分で魔力を体内で生成を可能にする必要がある。それが一つの学園への入学テストとなっている。
ただ魔法使いたちから魔力を体内に流し込まれただけでは魔力の生成には至らない。じゃあ何を持って生成を可能にするかと言うと...魔力に対する耐性と本人の類稀なる素質、そして精神力を持つ者に魔力という奇跡が宿る。
300年前、神々の戯れで魔のもの達が世界に産み落とされたと同時に、神々の力が魔力という形で最初の魔法使いたちに宿った。なぜそれが12人なのかは定かではないが、そう言い伝えられている。
そして魔力が最初の魔法使いに宿った際、宿らなかった人間たちも少なからず魔力の残滓のようなものが身体に影響した。それが魔力耐性であり、それが幸か不幸か素質のある者は、他者から魔力を流し込まれると魔力の残滓に濃く影響し、魔力を生成可能となる。
ただそこには一つ問題があった。たとえどんなに魔力耐性があり、素質があったとしても、精神力が必要だった。
他者から貰う魔力によって魔力の残滓が反応した瞬間、強烈な不安感、不快感、恐怖感が心を蝕むのだ。それが何故引き起こされるのかは分からないが、一説によると他者から与えられたものは、体が異物とみなして排除するという働きが濃く影響し、それがこれらの反応を促して拒絶するのでは無いかと言われている。
だからこの異物を排除するという体の構造に対抗しうる精神力が必要になるという訳になる。しかもタチの悪いことにこの魔力の拒絶反応が起きると、精神に大きく影響し、何かしらの心の傷を与え、人によっては精神が壊されることもある。それが入学生が100人近くしか居ないという確固たる真実なのだ。
だから町中の人は魔法使いたちに敬意を評し、色んな支援をしてくれている。
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「てことで、昼休みの後は魔力測定と
携帯型武装を渡すのでそのつもりでお願いします。」
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